「児童養護施設へ寄付する漫画、何がおすすめ?」の問いにリプ殺到「私もやりたい」「そういうの嬉しかった」 子どもたちに漫画を贈る理由とは

宮前 晶子 宮前 晶子

「あのう、詳しい人に聞きたいんですが 俺ボーナスが出たら児童養護施設に漫画寄付してるんです 今まで 鬼滅 呪術廻戦 スパイファミリー あたりを贈ってまして 次は少女漫画を贈ろうかと思うんですが、いかんせん少女漫画まったく知らないんです 何送ったらいいか、誰でもいいのでアイデアください」

ボーナスが出るたび、児童養護施設に漫画の寄付を行うマックスさん(@crazymax1101)の問いかけに、起こった大きな反響。

「フルーツバスケットは人生のバイブル。心が少し強くなれる、大きくなれる、幼少期に読んだらめちゃくちゃ良い」
「書店員です。 最近は、集英社の「ハニーレモンソーダ」「初×婚」が人気です」
「小学校教員です。「すみっコぐらし」や「ちいかわ」などのキャラクター系の漫画だと喜んでもらえる気がします」
などと具体的に漫画を推す人が殺到。

「少女漫画雑誌読んでると友達と懐かしいね~!って話盛り上がるので本当におすすめです」
「話題に乗り遅れないっていいな 話に混じれないってあの小さな世界では凄い辛いし惨めだから」と子どもたちに思いを寄せる人も。

また、児童養護施設で育った人からの
「図書の予算が少なく、とても嬉しい活動だなと思いました。私のいた施設にも、図書の寄付をしてくださる方がいました」
「施設にいた側からするととても嬉しいなと思いました。外泊もできないし、塾とかも行けなかったから皆と同じことしたいな~って小さい頃は思ってました」
といった声、
「養護施設に…その発想ありませんでした!気づきをありがとうございます」
「どのように寄付ができるか教えて欲しいです。いつかしてみたいと思ってましたが、 勇気が持てそうです」
とマックスさんの行動に背中を押されたという人もいました。

「そう言うことをスマートに出来るの、憧れます」というリプライには、
「スマートには全然できてないです笑 初めて寄付品持っていくときもオドオドしながら施設に電話して「これこれこういうものを寄付とかしたいんですが、迷惑でしょうか?」みたいなのを震え声で聞きましたもん。スマートじゃないですけど、多少でも子どもたちが喜んでくれたら最高ですよね」とマックスさん。

2000件超のリプライひとつひとつに目を通したというマックスさんが、なぜ児童養護施設に漫画を寄付するようになったのか? その思いを聞きました。

近くにある施設に定期的に漫画を寄贈するだけのシンプルな活動

――漫画を寄付されるという投稿、反応が大きいですね。

「これまでも寄付をした際にはTweetしていたのですが、反響はわずかで。今回突然数万件ものいいねをいただいて、驚いています。

今までは、流行っていて、自分も読んだことのある、俺好みの漫画を寄付していました。でも、自分が知らないものを読みたい子どももいると思って、少女漫画の寄付を考えたのですが、門外漢で。何が流行っているのか全く知らなかったため、意見を募ったというわけです」

――特に印象に残っているものは?

「児童養護施設で働いていらっしゃる職員の方のツイートで、“少し過激(露出や性行為)なシーンが多い話は避けて頂く方がいい。施設には性虐待を受けている子も多く、トラウマになったり、間違った性を覚えて施設内での性問題を起こしてしまったりしているのが現状なので”という内容のものです。少女漫画には無知なため、性的な描写を含むショッキングな展開が含まれる場合があることに気づいていませんでした。 また、被虐待児童がいる可能性にも思い至っていませんでした。 独りよがりになりがちな個人活動のため、相手のことを考える必要性にハッとしました」

――たくさんの漫画がオススメされていましたが、どの漫画を寄付するか決めました?

「少女漫画の特性上、入所児童のトラウマを刺激する可能性があるので、施設の職員さんに相談してから最終的に決めます」

――施設に勤めていた経験のある方は、アイドルのBlu-rayを推していました。

「それは、目から鱗で! すぐに、BTSのライブBlu-rayを購入したので、漫画と一緒に持っていくことにしました」

――寄付する施設は決まっているのですか?

「生活圏内にある施設1カ所です。これまでに、鬼滅の刃全23巻、鬼滅の刃 無限列車編Blu-ray、鬼滅の刃ファンブック2冊、鬼滅の刃の塗り絵2冊、呪術廻戦19巻、SPY☓FAMILY(スパイファミリー)9巻、藤本タツキ短編集3冊。多少抜けがあるかもしれませんが、多分こんなところです」

――マックスさんは、交流もされるんですか?

「コロナがありますし、俺もお礼を言ってほしいからやっているわけではありませんので、深い交流があるわけではないです。お礼の手紙は一度いただきましたね。何度か寄付をしていると、「前回の寄付してくれた漫画、喜んでますよ」など職員の方が教えてくれますし、それでいいです」

寄付してるからエライってことはない。でも「良いことができる人」にはなれると思う

――でも、なぜ寄付を?

「実は、最初に俺が寄付したのは漫画ではないんです。自分が使っていたPlaystation4。中古屋に売っても二束三文で買い叩かれるなら、と生活圏内にある児童養護施設を検索して、PS4とソフト、それから追加のコントローラーと、子供に人気であろうマインクラフトを購入して、寄付しました。それが2019年の冬でした」

――それから定期的に、ということに?

「伊達直人、タイガーマスク運動が話題になったころ、ニュースで「ランドセルはそもそも予算がつく。むしろ娯楽品などが足りない」と報じられていました。また、タイガーマスク運動を一過性のムーブメントにするのではなく、寄付を継続していくことが重要だというニュース解説もありました。それで、ボーナスのときに無理のない範囲で娯楽品をプレゼントしよう、と思いついたのです」

――ボーナスが出ると寄付をするって、なかなかできることではないという声も。

「ボーナスなんて残してたらあぶく銭みたいに使いますからね。そもそも俺は、金持ちでも高収入でもありません。そこそこ複合的な理由がないと寄付なんてできないです」

――複合的な理由とは?

「俺は映画が好きで、映画からたくさんのことを教えられました。多くの映画は「正しいことを行え」というメッセージが含まれているでしょう。中でも、明らかに善として扱われるのは無償で行われる人助けです。好きな映画から受けた影響を、自分なりにきちんと表出したい、と思って、無償の人助け=寄付に至ったというのも理由のひとつです」

――そのほかの理由は?

「直接的なきっかけは、鬼滅の刃の流行ですね。公開時、映画館のグッズ売り場でたくさんの子どもたちを見ました。テレビでも鬼滅が扱われることが多く、ネットニュースも鬼滅の話で溢れていました。ふと、児童養護施設の子どもたちは鬼滅に触れることができているのかが気になって…。

今の子どもたちは、親が加入しているサブスクリプションサービスでアニメなどに触れることが多いと聞きますが、施設にいる子どもたちが自由にサブスクに触れられるとは考えにくい。これだけ子どもたち世代が鬼滅一色になっているとき、鬼滅に触れられないだけで負い目を感じる事態が起きることは想像に難くありません。だから、鬼滅の漫画をプレゼントしたら、アニメが観られなくても困らないのではないかということで、漫画の寄贈を思いつきました」

――なるほど!そういう理由があったのですね。

「あと、もうひとつの理由として、入所児童にあなたを気にかけてくれる人はいると伝えたいから。単発の寄付はあると思うんです。誰かが一回だけ。でも、半年に1回でも漫画などの娯楽品がガツッと大量に寄付されることが継続されたら、少なくとも誰か一人はこの世の中で漫画を送ってくれる大人がいるんだってことが子どもたちに伝わります。あなたは誰かに注意を向けられてケアされるべき存在だ、ということをなんとなくでも感じてもらいたい。だから、続けたいと思っています」

――直接的な、即効性のある影響じゃないかもしれないけど、伝わって欲しいですよね。寄付に際して、ご自身で決めているルールはありますか?

「最初のゲームは中古でしたが、できるだけ新品を買って贈っています。また、俺が読んでほしい、やってほしいものではなく、子供たちが今読みたい、やりたいものを寄付すること、役に立たないものを送ることです」

――役に立たないもの?

「大人って、役に立つ物、知識が深まる、なにかのモチベーションになるもの、名作を贈りたがるでしょう。俺は、子どもの頃、そういうものを大人から渡されるのが嫌でした。学習まんがも良いけど、友達と楽しく話せるだけのものが欲しかった…。でも、大人はそういうものに眉をひそめます。だから俺は、役に立たなくてもいいから今流行っているものを送るようにしよう、と。鬼滅ブームの時は、鬼滅しかないと思って寄付しました」

――贈りたいものが贈れるのは、個人活動の魅力かも。

「今回、俺のツイートを見て、やってみようと思う、という声があったのはすごくうれしいです。やりかたを問い合わせる人も。児童養護施設などへ寄付するときには、必ず事前に施設に相談してから行ってください。俺も、「鬼滅の漫画寄付したいんですが、持っていっていいですか?みたいな感じで 許可もらって寄贈品持っていきました」

――寄付ってどうしたらいいの?と最初の第一歩を踏み出すのが難しい、と思っていたけど、そんなたいそうなことではないんですね。

「寄付してるからエライってことはないです。俺もいい人間じゃないです。たまたま今回バズっただけです。偉いのは施設職員の人だし、子どもたちです。更に極論をいえば、児童養護施設への寄付じゃなくって、募金箱に小銭いれるだけでもいいです。余裕のある人はちょっとだけ誰かのために動いてみませんか? 良いことしたら、「いい人」にはなれなくても「良いことができる人」にはなれると思うので」

後日、マックスさんは、多くの人からのアドバイスを受け、漫画を寄贈。

報告も投稿しています。「皆様、ご協力ありがとうございました 施設職員の方とも相談させてもらい、ハニーレモンソーダに決まりました その他、ご提案いただいたアイドルのライブBlu-rayと、コミックの購入に合わせてもらったキャンペーンステッカーと合わせて寄付します! ご回答、いいね、RT、本当にありがとうございました!」

■マックスさんTwitter  @crazymax1101

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