元男闘呼組・高橋和也がダメ人間に惹かれるワケ「負けを知らずに人生は語れない」

石井 隼人 石井 隼人

元男闘呼組メンバーで俳優の高橋和也(53)の中には「両極」がほどよいバランスで共存している。作家・島崎藤村による不朽の名作を間宮祥太朗主演で映画化した『破戒』(78日全国公開)では、尋常小学校の正教員でありながら、気の弱さゆえに酒浸りになってしまう風間敬之進を演じている。

アイドルグループ出身という煌びやかなバックグラウンドと反するように、高橋にはなぜか人生の日陰者役が似合う。実際にそのような設定のオファーも多いらしい。

完璧人間の方がきっと孤独

「台本をもらって読んでいくと、情けない人とか人生が嫌になってしまった人、人生のプレッシャーに押しつぶされてしまいそうな人などが確かに多いですね」と苦笑いも「僕自身は風間敬之進のような酒浸り人間ではないけれど、この人の心情は胸に迫るものがあります。弱い人間やダメ人間は嫌いではないというか、完璧人間の方がきっと孤独。パーフェクト人間を目指す方がつらいような気がします」と共鳴している。

俳優としてスタートしたばかりの若かりし頃はイケイケ役に手応えを感じていた。半面、ウジウジしているようなキャラクターはどのように演じていいのか悩むことも多かったという。しかし年齢と経験を重ねていくうちに「負けの美学」に気づく。

「人は負けを知ったり弱さを知ったりすることで優しくなれる。映画でも音楽でも小説でも、負けていく弱者の心に寄り添うような作品は勝者の側から描いたものに比べて深みが違います。負けを知らずに人生は語れない。それを僕は歌や芝居を通して演じてみたい。もちろんヒーロー役のオファーがあればやりますが…。でも似合わないと思うなあ」とルーザーへの愛着を口にする。

大切なのは良好な人間関係

ルーザーへの愛着はあるが、素顔の高橋は演じる役柄とは真逆。礼節を重んじで、人や仕事に真摯に向き合っている。「仕事をする上でも生きていく上でも、一番大切なのは良好な人間関係を築けるかどうか。どんなに才能がある人でも、敬意を払ったコミュニケーションを築けない人は結局ダメになる。これは芸能の仕事に限ったことではありません。いい人間関係を構築するためには、自分自身もちゃんとした人間でいなければいけないわけです」。

現在は山梨県をホームグラウンドとして、仕事で上京するスタイルを取っている。地方と都会のハイブリッド生活も「両極」のバランスを上手く整えてくれる秘訣のようだ。「僕は放っておいたら山の中に籠って昔のレコードを聴いているだけで満足してしまうので、たまに上京して流行を追うようにしています。自然の中にいる方が楽しくなってしまった時期もあったけれど、さすがに世間に興味を無くすのはまずい(笑)。ときに街に帰って新しいものに触れて、新しい洋服も買う。雑多な東京で刺激を受ける一方、山梨の自然の中でリラックスする。極端になると人間性は偏ってしまうもの。何事もバランスが重要です」と芸能生活40周年間近での境地を口にしている。

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