変わらないことが大切…昭和レトロブームで、脚光を浴びる「改源」や「仁丹」 Z世代にも人気の理由とは

松田 義人 松田 義人

Z世代はもちろん、老若男女を問わず「昭和レトロ」が静かにブームになっています。昨年『日経トレンディ』が実施した「2021年ヒット商品ベスト30」では「昭和・平成レトロブーム」が4位にランクし、若い世代にとって、昭和の時代に生まれた流行・文化や、それに伴うグラフィックなどを好んでいることが支持を押し上げました。

この流れはヘルスケア商品にも広まっており、ドラッグストアには古典的なパッケージをあえて打ち出すヘルスケア商品も少なくありません。昭和時代から続くパッケージを今に継承する「浅田飴」、グッズも登場するほどの人気を誇る「ケロリン」など。また、風邪薬の希少価値が高かった時代に舞い戻ったかのような包みがシブい「改源」、さらに長きにわたって、製品そのもののビジュアルイメージをパッケージに強く反映させた「仁丹」など。

今回は、このヘルスケア商品における「昭和レトロ」ブームの影響について、「改源」の製造販売元・カイゲンファーマ、そして「仁丹」の販売元・森下仁丹双方の担当者に話を聞いてみました。

薬包紙に包まれた風邪薬がたまらなくかわいい「改源」

 

 

まず、1924年(大正13年)に発売され、今年で98年となる風邪薬「改源」からご紹介します。この98年の間に大きく分けて6回のパッケージリニューアルがあったようですが、いずれも「改源らしい」デザインにこだわったそうです。「改源」の製造販売元・カイゲンファーマの担当者に聞きます。

「ひと目見て『改源』だと分かっていただけるパッケージデザインを大切にしてきました。近年では、珍しい薬包紙の風邪薬に『レトロ感がいい』『紙に包まれているのが昔っぽくて好き』という声が増え、改めて注目していただけるようになりました。今の『昭和レトロブーム』をきっかけとして『改源』の『昭和っぽさ』が若い世代の方にも、さらに受け入れられていければ嬉しいです。

良い意味で『変わらないこと』がお客さまの信用につながり、時代を超えて長く愛され続けられるのではないかと自負しています」(カイゲンファーマ・担当者)

中身をパッケージに強く反映させた「仁丹」のデザインは昭和時代からのもの

続いて、「仁丹」を見てみましょう。明治時代から続くシルバーの口中清涼剤の丸薬ですが、このビジュアル、そしてパッケージはZ世代にとっては目新しく映ることでしょう。「仁丹」の販売元・森下仁丹の担当者に聞きます。

「現在の仁丹のパッケージは昭和・平成レトロを意識したわけではなく、長きにわたり採用されてきたパッケージが、時代が移り変わった結果、レトロなものになったと認識しています。現在の『仁丹瓶入り』は1987年(昭和62年)から採用しているものです。『バラエティケース』については1968年(昭和43年)からケースの形はそのままにグラフィックのみを変更しながら現在まで採用しています。また、『メタルケース』は1989年(平成元年)から変わらず現在まで採用しています。

近年、お笑い芸人の方や俳優の方が仁丹をご愛用くださっているおかげもあり、知っていただく機会が増え、Z世代に限らず幅広い年代の皆様にご利用いただいております。

懐かしさや好奇心などきっかけは様々なようですが、パッケージについては『レトロでかわいい』『オシャレかも』といったお声をいただくこともあります。また、趣味で古い『仁丹瓶』を収集される方もいらっしゃるようです。SNS等でそういった投稿を拝見すると、モノづくりの会社としては、心をこめて送り出した製品がこのように大切にしていただけることがとても幸せで感謝の気持ちでいっぱいです。

仁丹の『仁』は儒教の教えで『思いやり、優しさ』をあらわし、『丹』は良薬や丸薬を意味しています。仁丹をはじめとして様々な製品を通じ、『思いやりの塊』をお届けし、少しでも皆さまの健康のお役に立てればと思います」(森下仁丹・担当者)

「昭和レトロ」の支持は、続々と新しい商品・ツールが登場する今だからこそ?

「昭和レトロ」を感じさせる医薬品のパッケージデザインの多くは、クラシカルなデザインをあえて令和の時代に打ち出したものではなく、各社が古くから守り抜いた意匠でした。続々と新商品が登場し、次々と新しいコミュニケーションツールなど登場する今だからこそ、こういった「歴史を感じられる商品」「変わらない商品」に、潜在的に価値を見出し、信頼を寄せる若い世代が多いように思いました。

親しみやすく、そして歴史を感じることができる「昭和レトロ」なパッケージ。こういったデザインへの支持は今後もまだまだ続くでしょうし、続々と登場する「新しいもの」だけでなく「変わらないことの素晴らしさ」もまた、さらに評価されることに期待大です。

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