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「夏休みはたくさん働いてほしい」と職場から頼まれた高2息子 バイトで稼ぎすぎると扶養を外れて税金や保険料が上がる?【FPが解説】

もくもくライターズ もくもくライターズ

「夏休みはシフトが厳しいから、たくさん働いてほしいと言われている。お金も稼げるし、どんどん働こうと思っている」

フルタイムの事務職として働く49歳の女性は、高校2年生(17歳)の息子さんからそう切り出されました。頼もしさを感じる一方で、ふと不安がよぎりました。

以前ママ友に「稼ぎすぎると扶養を外れて、親の税金や保険料が上がるんじゃないの?」と言われたことを思い出したからです。

扶養や税金を気にして、「働きすぎはダメ」と子どものシフトにブレーキをかけてしまう親は少なくありません。ただ、税金や社会保険の仕組みは複雑で、「〇万円を超えたら即アウト」という単純な話ではないのです。

夏休みにたくさん働くと、本当にすぐ扶養を外れてしまうのか。判断の分かれ目はどこにあるのか。この夏、親子でお金や働き方について話し合ってみてはどうでしょうか。

「扶養を外れる」と何が変わる?―税と社会保険、“2つの扶養”を整理する

結論からお伝えすると、夏休みの1~2カ月だけ一時的に収入が増えても、それだけでただちに扶養を外れて損をするわけではありません。

まず押さえたいのは、扶養には税法上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があり、それぞれ基準額も判定ルールも別だということです。ここを混同したまま「〇万円を超えたら終わり」と思い込むのが、最大の誤解のもとになります。

◆税法上の扶養
1つ目は、親の所得税や住民税に関わる「税法上の扶養」です。子どもの年間の給与収入が一定額を超えると、親はその子の扶養控除を使えなくなり、その分だけ税金が増えます。

扶養控除の対象になるのは、その年の12月31日時点で16歳以上の子どもです。今回の息子さんは17歳なので「一般の控除対象扶養親族」にあたり、2026年(令和8年)分は年間の給与収入が136万円以下であれば、引き続き親が扶養控除(所得税で38万円)を受けられます。

なお、19歳以上23歳未満(主に大学生)になると、給与収入が197万円まで段階的に控除を受けられる「特定親族特別控除」が使えます。同じ「扶養」でも、年齢の段階で線引きが変わります。

◆社会保険上の扶養
2つ目は、健康保険に関わる「社会保険上の扶養」です。子どもの年間収入が130万円以上になる見込みだと、親の健康保険の扶養を外れ、子ども自身が勤務先の社会保険、または国民健康保険に加入することになります。

大人のパートで話題になる「106万円の壁」は学生が原則対象外なので、高校生がまず意識したいのは130万円のラインです。

ここで、税法上の扶養とは判定方法が異なる点に注意が必要です。税法上は1月から12月までに実際に受け取った給与の合計で判断します。

一方、社会保険上は暦年の合計ではなく、労働契約などから見込まれる「これから先1年間の収入」で判断します。同じ130万円でも見方が違い、たまたま忙しい月があっただけで、ただちに扶養を外れるわけではありません。

あわせて、冒頭の「扶養を外れると親の税金や保険料が上がるのでは」という不安も整理しておきましょう。まず税金は、子どもの給与収入が136万円を超えて親の扶養控除が外れると、親の所得税・住民税が増えることがあります。

一方、親が会社員の場合、健康保険料は親自身の給与で決まり、扶養している家族の人数では変わりません。そのため、子どもが扶養を外れても親の保険料が上がるのではなく、外れた子ども本人に新たな保険料の負担が生じる、という形になります。

夏に集中して働くと、本当に扶養を外れる?―ケース別に試算する

言葉だけではイメージしにくいので、具体的な数字で見てみましょう。

◆扶養に影響しないケース
息子さんが学期中は月2万円ほど、夏休みの7・8月だけ月10万円ずつ稼いだとします。

それでも年間の合計は40万円前後。136万円にも130万円にも届かず、税・社会保険のどちらの扶養からも外れません。親の税負担は変わらず、息子さん本人にも所得税はかかりません。

「夏に一気に稼いだ」ことだけを切り取って、不安になる必要はないのです。

◆注意したいケース
ふだんからよく働いていて、そこに夏の増収が重なり、年間で130万円を超えそうな場合は少し注意が必要です。社会保険の扶養を外れると、子ども自身に保険料の負担が生じます。

ただし、すぐあきらめる必要はありません。人手不足などで一時的に収入が増えたケースには救済があります。

勤務先が「一時的な収入変動である」ことを証明すれば、連続2回まで親の扶養にとどまれる仕組みがあります。

さらに2026(令和8)年4月からは、扶養に入れるかどうかを、労働契約の内容から見通しやすくする取り扱いが始まりました。これは、扶養を外れないよう繁忙期にシフトを控えてしまう「働き控え」を防ぎ、契約を結ぶ段階で扶養に入れるかどうかを予測しやすくする狙いがあります。

具体的には、労働条件通知書などに記された時給・勤務時間・日数から計算した年収の見込みが130万円未満であれば、契約のときには予想できなかった臨時的なシフト増による収入は、原則としてその見込みに含めない扱いです。夏休み中の臨時的なシフト増も、この対象になり得ます。

ただし、契約内容をわざと低く設定しておきながら、実際には恒常的に長い時間働いているようなケースまで認められるわけではありません。

なお、年間の給与収入が136万円を超えると、親の扶養控除(38万円)が外れ、親の所得税・住民税が増えます。増える額は親の所得によって変わりますが、目安として年数万円ほどです。

要するに、単月ではなく1年間のトータルで見通すことが大切で、神経質になりすぎる必要はありません。

扶養を気にせずに働く―夏休み前に親子で確認したい4つのこと

子どもに扶養のことを気にせず、気持ちよく働いてもらうには、事前の準備と親子の会話が欠かせません。4つのポイントに絞って、お伝えします。

1.年間収入の見込みを親子で把握する
「夏でいくら稼ぐか」だけでなく、1月から7月までの実績と、9月以降のシフト予定も合わせて確認します。給与明細やシフト表を見ながら、年間の合計が基準内に収まるか試算しておくと安心です。

2.勤務先へ相談するタイミングを知る
見込みが基準を超えそうなら、早めにバイト先へ「130万円未満に抑えたい」「一時的なシフト増の場合に必要な手続きがあるか確認したい」と伝えると、調整や手続きがスムーズです。

3.年末にあわてないよう収入を管理する
給与の締め日や支払時期は勤務先によって異なります。あらかじめ確認し、12月末までの年間収入をこまめに把握しておきましょう。

4.「お金の仕組みを親子で学ぶ場」にする
働いて得たお金にどう税金が関わるのか、扶養とは何かを話し合う時間は、社会に出てから役立つ金銭教育になります。

夏休みを成長の機会に

「扶養を外れる」と聞くと、不安になりがちです。しかし、仕組みを知れば、夏に数カ月シフトが増えた程度で、ただちに深刻な事態になるわけではないと分かります。

税法上と社会保険上では、扶養の基準や判定方法が異なります。一時的に収入が増えても、すぐに扶養を外れるとはかぎりません。

大切なのは、「働きすぎはダメ」と一律に止めるのではなく、1年間の収入見込みを親子で確認し、上手に管理すること。自分で頑張って稼ぐ達成感は、高校生にとって大きな成長の機会になります。

正しい知識を共有しながら、息子さんの「挑戦したい」という前向きな気持ちを、温かく後押ししてあげてはいかがでしょうか。

【監修】財前裕(ざいぜん・ゆたか)1級ファイナンシャル・プランニング技能士 元銀行員・Webライター。銀行員時代には、個人の資産運用や住宅ローン、保険など多岐にわたる金融商品の提案を行い、顧客のライフプランに合わせた最適なアドバイスを提供してきた経験がある。現在FP1級を取得し、Webライターとして、お金に関する記事執筆を担当している。

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