とある有名人が自身の公式SNSに、関係者からもらったという手紙の写真をアップしていました。プレゼントに添えられたやさしさあふれる文面。しかし文字は赤色だったのです。昭和世代の筆者は思わず二度見。小学生の頃、「人の名前や手紙は赤字で書いたらダメ。赤い文字は絶交したい人に出す手紙」と習ったからです。赤い文字の手紙はいいの? 悪いの?
簡単なメッセージでも「赤は使用しないことをおすすめします」
手紙文化振興協会(東京都千代田区)所属で、手紙の書き方コンサルタントの西川侑希さんに話を聞きました。
──手紙や宛名を赤い文字で書くことは失礼に当たりますか。
「一般的にはそのように言われています。特にあらたまった手紙や目上の方への手紙、メモ書きも含めたビジネスでの手紙でも使用しないことをおすすめします」
──赤い文字は何を意味するのでしょうか。
「赤字で書いてはいけない理由には諸説あり、限定することが難しいのですが、考えられるものをいくつかご紹介します。まずは、縁起が悪いという理由です。赤は血や戦時中の赤紙と呼ばれる召集令状など、命に関わることを連想させるためです。また、会計(簿記)では赤い字はまさに損失を意味するため好まれません。昔、絶交状で朱文字を使用したことや果たし状で血判を使用したことから『人間関係を断つ』というイメージにもつながります。宗派によるものなのか、地域によるものなのか、詳細は不明ですが、存命中に建てたお墓に名前を入れるときは区別するために赤字で入れることがあるようで、お墓を連想させるためとも言われています」
「赤字は特別な意味を持つからだとも言われています。一般的に文字は『黒(墨)』もしくは『ブルーブラック』で書きます。あえて赤や朱で書く場合は、なにか通常とは異なり、注目をする必要がある場合です。日常生活ですと『赤信号』『消防車』『禁止を表す標識』などでしょうか。昔は人々の記憶に残るように、罪人の名前を朱書きしていた地域もあるようです。蛇足になりますが、緑色も決別や別れを想起させる色として、避けた方がよいと言われています」
──手紙文化振興協会では、手紙の文字の色は何色を推奨しますか。
「弊協会では『青』を推奨しています。青で書くことで元気がよく、若々しい印象を読み手に与えます。また、相手の印象に残りやすいというメリットもあります。日本は墨(黒)の文化がありますから、青で文字を書くことにためらいを感じることがあるかもしれませんが、海外ではブルーブラックがオフィシャルな場面では使用されています。ひと言で青といっても、その色合いはさまざまで、紺色や明るい青などがあり、相手やシチュエーションによって使い分けることをおすすめします」
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赤は目立つ色だからーー気軽な気持ちでペンを選ぶと、相手にとんでもない誤解を与えてしまう恐れがあります。ちょっとしたメッセージだとしても、手紙の文字の色には注意したいですね。