脳梗塞で引き起こされる「むくみ」のメカニズム、その改善方法とは 専門医に聞いた

ドクター備忘録

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脳梗塞による後遺症は数多くありますが、なかでもよく耳にするのが「身体がむくむ」という症状。脳梗塞になるとなぜ身体がむくむのか、身体にどのような影響を及ぼすのか、そのメカニズムと改善方法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――「脳梗塞になると足がむくむ」と言われますが、どうしてなのでしょうか?

半身麻痺となってしまった場合、手足の動きが悪くなり、筋肉を動かしづらくなってしまいますよね。実は心臓に戻っていく静脈というのは、筋肉が動かないと流れないようにできているんです。つまり、筋肉を動かすことで心臓へと血液を戻しているんです。身体が麻痺してしまうと筋肉を動かすことが少なくなってしまうため、血液が溜まってしまうんです。血液が滞留すると、そこから水分だけが外に出て皮膚の下に溜まり、むくんでしまうということなんです。

――むくみを解消するためにはどうしたらいいのでしょうか?

ご自身で手足を動かすことが難しい場合には、マッサージ機を活用したり、人に動かしてもらうなどの方法が有効ですね。ほかにも、ストッキングを締めるなどの加圧という方法があります。さらに、寝ている時に手足をあげることも効果的で、座布団などの上に足を置いて眠ると起床時にはむくみが少し改善されています。血液は立ったり座ったりすることの多い昼間に下の方に溜まるため、むくみは夕方になるとひどくなります。また、手を首から上にあげる動作もむくみ解消に効果的です。

――手の場合は分かりやすいですが、普段靴下を履いていることが多い足のむくみは意外と気づきづらいですよね。

そうですね。足の場合、靴下の痕が残っていればむくんでいるということです。ほかにも、脛(すね)を指でぎゅっと押さえた際に皮膚が凹んだ場合は、むくんでいるというサインになります。

――座りっぱなしや立ちっぱなしだと、むくみやすいのでしょうか?

座りっぱなしや立ちっぱなしの状態が続いていると、身体が麻痺していなくてもむくみやすくなります。適度に身体を動かさないと血液が上がってこないため、むくみやすくなってしまうんです。

――むくみがひどくなると、どうなるのでしょうか?

静脈の流れが滞ってうっ滞(うったい)してしまうということが問題で、むくむことで静脈に血栓ができてしまう場合があるんです。血栓ができると、エコノミークラス症候群が引き起こされて命に関わることもありますので、「妙にむくんでいるな」という方には1度検査を受けていただきたいですね。

――むくみやすい人と、むくみづらい人がいるのでしょうか?

脳卒中のなかでも、脳梗塞よりも脳出⾎の方が静脈⾎栓症を起こすリスクが⾼いといわれています。重症化を防ぐためにも、むくみをできるだけ早く発見し、自分のできる範囲、あるいは周囲の手を借りながら手足を動かすことがとても大切です。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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