「どなたか教えてください」 15年前、小児科で読んだ本が忘れられない 手がかりは2輪のチューリップ

金井 かおる 金井 かおる

 Twitterユーザー「Tomei_Ningen」さん(@ningen_tomei)は現在、ある本を探しています。5歳の頃、小児科の待合室で読んだ物語。作品名が分からずに、あらすじを頼りに探し続けてきましたが、有力な情報は得られませんでした。そこで5月末、自身のTwitterで呼びかけました。

 「閉業してしまった小児科で幼い頃読んだ2輪のチューリップのお話の内容がずっと忘れられず未だに探しているのですがどうしても見つかりません…もし思い当たるものがありましたら教えていただきたいです。児童書の挿絵付きの短編集だったような記憶があります…昔の記憶なのでかなり曖昧です…」(Tomei_NingenさんTwitter投稿より)

 投稿者さんが記憶するストーリーはこうです。

 「2輪の幼いチューリップはどちらがきれいに咲けるか競争しようと互いに約束する。まだつぼみの頃、季節外れのチョウが現れ『蜜を分けてください』と頼まれる。片方はきれいに咲けなくなるからと拒んだが、もう片方はチョウをかわいそうに思い、無理につぼみを開いて自分の蜜を与える。春になり、きれいな花としおれた花が並んだ。そこに女の子が現れ、きれいに咲いたチューリップを摘み取ってしまう。ラストシーンには折られたチューリップとしぼんだチューリップが2輪並ぶ」

 幼心にもこの展開には驚いたようで「チューリップにとってどれが正解だったのか全くわからなくて、ずっとその時の気持ちが残ってます」。

15年近く「ずっと気になっていた」

 投稿者さんに話を聞きました。

──何年前に読んだ本ですか。

 「5歳ごろのことなので15年ほど前に読んだお話です。読んだ時も相当古い本に感じたのでかなり前のものなのかもしれません。記憶の限りではおそらく児童向けの字が大きい小説で、挿絵が多く入っていました。短編集の中の1つのお話だった気がします」

──Twitter投稿に添付された4枚の絵は。

 「私の描いた絵です。記憶をもとにカラーにして描いたのですが、実際の絵はモノクロでした。黒いペンのようなもので描かれた絵だと記憶しています。チューリップが2輪並び、話が進むにつれてチューリップの背が高くなり、チョウが現れ、最後の挿絵は切り取られ茎だけになったチューリップと、萎れたチューリップが並んで咲いている様子が描かれていました。女の子は挿絵には出てきませんでした。かなり遠い記憶ですので間違えて覚えている点や脳で補完してしまっているところがあるかもしれません」

──どうやって調べましたか。

 「ずっと気になっていたのですが、少しずつ探し始めたのは約7年前からです。質問コミュニティサイトに書いてみたり、小説を探すサイトで調べたりしていました」

     ◇

 投稿者さんに教えてもらった情報を整理します。

・15年ほど前には出版されていた
・読んだ当時、すでに相当古い本に感じた
・本のサイズは四六判くらい。文庫本までは小さくなかった
・しっかりとしたハードカバー。雑誌タイプではなかった
・児童向け、大きな字の短編集
・挿絵が多く、色はモノクロ
・チューリップが2輪並んだ絵が続く
・全集の中の1冊だったかどうかは不明。
・ミツバチが登場する物語も収録されていたような記憶がある

絵本のプロ「アンデルセンでは?」

 絵本コーディネーターとして活動する東條知美さんに今回の投稿を見てもらうと「探しものとは挿絵などが違いますが…」と断った上で、可能性の一つとしてある物語を教えてくれました。

 「アンデルセン童話に『だれが一番幸福だったか』というお話があり、これは探されている物語のテーマとごく近しいものがあります。いちばん幸福なバラとは?といったテーマです。『アンデルセン童話全集3』(西村書店)などに収録されています」

 なぜアンデルセンが真っ先に思い浮かんだのでしょうか。

 「美醜をテーマとした物語だからです。『みにくいアヒルのこ』もそういったテーマをはらんでいますね」

 『だれが一番幸福だったか』。主人公は庭に咲くバラの花です。一番幸福になれるのは1輪だけ。そこにさまざまな人間が現れ、花を摘み取っていき、最後にはーーというストーリーです。

 今回の投稿者さんが探す本と細かな設定は違っていますが、美しい花の中から一番を決めたり、人間によって摘み取られたりと、いくつかの共通点があり、道徳や教訓は通ずるものがあります。

図書館のレファレンスサービスに相談

 全国の公共図書館にはデータベースの中からさまざまな検索ワードを駆使して目的の本を調査してくれるレファレンスサービスがあります。最寄りの図書館で解決しなかった場合は、図書館経由で東京の国立国会図書館へ問い合わせすることもできます。今回の投稿者さんは先日、居住地域にある図書館へ相談。その場では本のタイトルが判明しませんでしたが、現在も引き続き調査を行なっているということです。

 皆さんの中で投稿者さんが探す1冊に心当たりのある方はまいどなニュース編集部までご一報ください。

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