世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級王者の寺地拳四朗(てらじ・けんしろう)選手(30)=京都府城陽市出身、東京都在住=が、電車内で痴漢被害に遭ったことをツイッターで明かした。恐怖のあまり声も出せなかったとし、「周りに被害にあった方が居たら優しく寄り添ってあげて下さい」と訴え、共感を呼んでいる。
京都新聞の取材に応じた拳四朗さんによると、今月22日に練習帰りの電車内で痴漢に遭った。車内はすいていたが、40~50代くらいの男が拳四朗さんの隣に座り、顔を見ながら太ももの下に手を入れてきたという。
拳四朗さんは「突然のことで最初は痴漢をされているのかどうかも分からなかった。とにかく怖かったし、恥ずかしさもあって声を出したり抵抗したりすることは無理だった」と振り返る。席を立ち、隣の車両に移動することで精いっぱいだった。
その後、痴漢の恐ろしさを多くの人に知ってもらおうと、ツイッターで被害を告白。最初のつぶやきだけで5千近くリツイートされた(26日現在)。「世界チャンピオンのボクサーでも恐怖で固まる。それが痴漢という性暴力だ」「痴漢って男性女性関係なくされた方は一生忘れられない。思い出すと本当に悔しいし怖い。茶化してる人は猛省して欲しい」などと、自らの被害体験を含め、さまざまな意見が書き込まれた。
反響の大きさを受け、拳四朗さんは、続くツイートで「男性で痴漢被害に受けてる人がこんないるのにびっくりしたのと同時に、やっぱり逃げるしかできない人も多い(原文ママ)」「女性の被害者はほんと僕が思ったよりめっちゃ怖い思いをしてると思う」とつづった。電車に乗る時は、周りを警戒するようになったという。
性暴力は、被害そのものの深刻さに加え、無理解や偏見により、周囲が被害者の「落ち度」を責める二次被害も根深いとされる。拳四朗さんも「被害に遭った人に『なぜ抵抗しなかったのか』『どうして声をあげなかったのか』などと聞いたり、ちゃかしたりすることは、被害者をさらに追い詰めるので絶対にやめてほしい。自分が被害に遭ってみて初めてよく分かった」と強調する。
ツイートでもこう呼び掛けた。「少しでも痴漢の怖さが伝わればよかった。被害にあった方はなにも悪くない。周りに被害にあった方が居たら優しく寄り添ってあげて下さい」