息子が4歳のころ、ドイツの幼稚園に通わせていた時の思い出です。ドイツ語が満足にできずアジア人は彼ひとりという環境にもかかわらず、毎日楽そうに通園していました。ところがある日、「幼稚園に行きたくない!」と泣いて拒否。何事かと思って理由を聞くと、L君という男の子が叩いたりせっかく作ったパズルを壊したりするのが嫌だと涙ながらに訴えてきました。
ドイツの幼稚園でまさかのいじめ?
「もしかしていじめられているのでは……」
心配になって朝一番で先生に相談すると、こんな回答がかえってきました。
「実はL君は他の子にも暴力を振るっていて、クラスでも問題になっています。今度、ご両親を呼んで話し合いをする予定です」
…日本だったら、ここまでハッキリ言うでしょうか。
悪意ある表現を使えば「あの子は問題児だから、今度両親を園に呼び出します」と他の保護者に伝えているわけですから。でも現状を説明してもらったことで、色々な意味で安心しました。
まず、息子が「いじめの標的」になっているわけではないということ。
幼稚園で組織的ないじめはほとんどないでしょうが、人種差別的な扱いがあるのではないかと心配していました。
さらに、「息子がいじめる側ではない」とわかったこと。先に息子が暴力を振るい、反撃されている可能性もあったからです。言葉が通じない環境のストレスを暴力で解決していたらどうしようかと思っていましたが、杞憂に終わりました。
そしてなにより、「園が問題を把握し、解決に向けて動いている」と教えてもらったこと。
息子はL君の暴力を先生にたびたび訴えていたようですが、L君は「やっていない」と言い張っていたそうです。誰にもわかってもらえない悔しさも、息子にはストレスになっていたのかもしれません。
だから息子には伝えました。「先生は、L君がみんなを叩いているのを知っているよ。L君がやっていないとウソをついているのもね。だから、もし嫌なことをされたらすぐに先生に言いなさい。先生は、あなたが悪くないとわかっているから!」と。
息子の話を聞く限り、L君の暴力は簡単に収まることはありませんでした。でも安心したのか、登園拒否をすることはなくなりました。
「成長過程に必要なこと」なんて都合よく解釈しないで
ドイツでの体験をSNSに投稿したところ、いじめ被害者だった方からコメントをいただきました。
先生、いじめ加害者、いじめ被害者(コメントをくれた方)で話し合ったところ、実はいじめ加害者のひとりは別の生徒にいじめを受けており、そのストレス発散のためにいじめをしていたと告白したそうです。その他の加害者も、中学受験のストレスや家庭内不和などを抱えていたといいます。子どもが暴力的になるのには必ず原因があるのでしょう。
いじめに関する最近の報道を見ている限り、日本ではいじめを軽く捉えていると感じます。
「子どものやることだから仕方がない」「成長過程に必要なこと」などと都合よく解釈せず、学校・園、子ども、保護者の全員が問題に向き合い、根本的な原因を解決する姿勢が必要ではないでしょうか。