その「いいね」押していいの? SNSに続々投稿“かわいいペットカワウソ”の姿…安易な情報拡散が野生動物の命脅かす

茶良野 くま子 茶良野 くま子

「かわいいからこそ知ってほしい『コツメカワウソ』のこと」-。愛知県の豊橋市総合動植物公園「のんほいパーク」のコツメカワウソ展示場に、こんな大きなパネルが掲示されました。カワウソは食肉目イタチ科の動物。特に東南アジア原産で小型のコツメカワウソは多くの動物園で見られる人気者ですが、ネット検索すると「値段」「飼い方」が上位に。SNSを見ると個人やふれあいカフェの「ペットカワウソ」も多くいます。でも、そもそもペットにして良い動物なのでしょうか。看板では、SNS情報に「いいね」すること自体が野生動物に及ぼす影響を考えてほしいと呼びかけています。ことしの「世界カワウソの日」は5月25日。

看板ではコツメカワウソについて、違法な取引によって絶滅のおそれのある野生動物で、ワシントン条約で商業目的の国際取引は原則禁止されていることなどを紹介。個人の「飼いたい」欲求が違法な捕獲や密輸を助長し、絶滅のおそれが強まっていると説明。家庭で適切な飼育環境を整えることは困難で、ペットにすべきでないとしています。

看板作製に協力した「日本アジアカワウソ保全協会」事務局長の中木原まいさんに聞きました。

―「いいね」を押すのも良くないと

「コツメカワウソ自体はかわいい動物ですし、その姿を発信することには反対していません。でも、『いいね』や『シェア』を押す前に考えてもらいたいと。インスタグラムで『#カワウソ』を検索すると、カフェでカワウソを抱っこしている写真や、肥満のカワウソなどに『かわいいカワウソ』などのキャプションが付いた投稿が見られます。野生動物のそういった姿を本当に『かわいい』と感じるのか、それが本当に拡散するべき情報なのかを考えてもらいたいのです」

―SNS発信者へ呼びかけは?

「協会として、発信する方の数を把握したり直接連絡を取ることはしていません。今後は、カワウソを売りに収益化しているユーチューバーなどへの対応ができれば、と考えています」

―動物番組で紹介されることは減った印象があります

「『ペットのカワウソ』の需要が減って商用利用されなくなるのはうれしいことです。カワウソに限らず、保全対象である野生動物をペットにすることを『おかしい』と感じる視聴者が増えると心強いです」

―密輸事件のニュースもよく見ました

「環境省のコツメカワウソ登録制度に加え、コロナ禍で海外渡航が減ったのが密輸減に繋がっています。しかし、登録制の開始前に駆け込みで多くのコツメカワウソが輸入されたため、業者による繁殖が進められ販売が進むと思われます。正規に登録され流通するコツメカワウソについても、『合法的に飼育できる』という情報が新たな密輸や安易な導入のきっかけになる可能性は十分にあります」

同園内では3月からパネルを掲示。同園で活動するボランティア団体「のんほいパーククラブ」と、豊橋観光コンベンション協会、同園が協力して実施する学校団体向けの環境教育プログラム「動物たちから学ぶSDGs」で使用されており、ほかにもホッキョクグマなど計10種類があります。パネルラリーでめぐり、参加者に、野生動物のために自分にできること、すべきことを学び、考えてもらうのが目的です。

SNSでの安易な情報拡散が野生の命を危険にさらしているという現実。さらに今後、ペットカワウソの飼育放棄・野生化も危惧され、「本来、日本には生息していない動物によって、新たな環境問題の発生や生態系への多大な影響が懸念されます」と中木原さん。SNSが状況を悪化させている反面、命を守るための情報発信へ果たす役割は大きいとして、「コツメカワウソにとって適切な飼育環境や、野生での本来の姿はどういうものなのか、協会として情報を公開・発信していき、正しい情報が拡散されるよう促す取り組みにも力を入れていきたい」と話してくれました。

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