増加する子ども食堂、変化するその役割 貧困支援→コミュニティ創造の場へ

八木 純子 八木 純子

 「子ども食堂」は全国的に増加傾向にあり、いまや子どもだけでなく、幅広い世代が交流する場としても注目を集めている。そんな中、当初から多世代交流の場を目指して大阪で活動してきたのが「わいわいワイキ食堂」だ。運営するNPO法人「WAIKI」の近藤量行理事長に子ども食堂の「いま」と「未来」を聞いた。

時代とともに変遷してきた子ども食堂

 2010年頃に始まったといわれる「子ども食堂」は当初、朝ご飯や晩ご飯を十分に食べることができない子どもたちへの支援が中心だった。そこから全国的に広がりを見せ、いまやその数6000カ所以上だとか。

 「わいわいワイキ食堂」はコロナ禍の中、2021年11月にスタートした。運営しているのは大阪府吹田市に拠点を置くNPO法人「WAIKI」(2021年8月設立)で、ここでは当初から多世代交流地点を目指してきた。

 法人名の「WAIKI」はつながるなどの「和」と、学びや生きるの意味を込めた「生」をもじって「和に生きる」ということから名付けられている。近藤理事長は「WAIKIを通じて幅広い年齢層の方に交流していただき、人々の心が通い合った安心できる街づくりも目指しています」と話す。

 さらに「これまでの子ども食堂はどちらかというと子どもへの貧困支援や、子どものためのコミュニティ、居場所づくりのイメージがありました。しかし、コロナ禍を経て、子ども食堂も大きく変わろうとしていると思います」と存在意義は高まっていると認識。今後は「子どもの余暇支援やコミュニティ創造の場。そして、子どもだけでなく、地域の高齢者や障がい者など様々な人の居場所にもなっていくと考えています」とも話した。

 では、子ども食堂はどのように変遷していったのだろうか。

 【黎明期(2010年頃)】

 支援が届きにくい貧しい子どものための食堂というイメージが強く、主に貧困支援・弧食支援・食育支援が行われていた。

 【拡大期(2019年まで)】

 いろんな環境にいる子どもが安心して、往来できる場所として、一気に拡大。

 【コロナ禍(2019年~】

 いままであった居場所がなくなったり、行きづらくなったりした時代。そのため、お弁当の配布がメインになり、人との関わりが少ない社会へ。黙食、自粛が叫ばれ、他者との関わりも減少。

 これらを経て、注目したいのは今後だ。

 【アフターコロナ(2022年~)】

 近藤理事長によると子ども食堂は「子どもや高齢者が垣根なく交流する地域の居場所へと変わっていく」という見立て。また「人との関わりや共生が復活し、多世代交流、社会活動の場になると考えています。地域や街で子どもを育てる環境づくりができていくのでは、と期待もしています」という。

子ども中心に幅広い世代も集う子ども食堂へ

 「わいわいワイキ食堂」の開催は、毎月第3火曜日の午後4時~午後6時まで。ご飯を食べるだけでなく、ボランティアさんたちと一緒にゲームをしたり、宿題をしたり、地域の人とふれあったりの、あっという間の2時間だ。

 人気はやはり月替わりの食事メニュー。取材させていただいた5月17日は、シーフードピラフとマカロニサラダの「お子さまプレート!」が提供された。「お子さま」とついているとはいえ、大人も食べたくなるおいしそうなプレートだ。

 また、今回は5月開催だったこともあり、子どもたちが「ちまき」づくりを楽しく体験。保護者の方からも「今まで作ったことがない」と喜ばれていた。

 次回6月21日の開催では、梅炊き込みご飯とアジフライがセットになった「梅雨でも気分はさわやかプレート!」(コロナ感染状況により、お弁当に変わる可能性も)。七夕シーズンの7月19日には冷製ジャガイモスープと星形人参、星形コロッケの「七夕プレート」を用意する予定だ。

 実際に利用した保護者は「学校と異なる場に集まる機会が少ない現在、気軽に集まることができる場は貴重です」と話し、参加したボランティアは「子どもと交流することで新たな刺激を受け、やりがいが生まれました」と。また、地域の人にも好評で「子ども食堂同士でコラボして相乗的に街を盛りあげたい」という声も聞かれた。

 どんどん広がって行く交流の輪。興味のある人は子ども食堂にぜひ、訪れてみてほしい。

 ◇子ども食堂「わいわいワイキ食堂」

 大阪府吹田市内本町3-25-16「ライフケア吹田」1F多目的シェアスペースWAIKI
 毎月第3火曜日16:00~18:00開催 ※次回は6月21日(火)開催予定、参加費:中学生以下 100円、高校生以上 500円、定員20名

事前予約制※開催の3日前までに要予約

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