おっとりしていたり、いじわるだったり…。人の性格というものは死ぬまで治らないものかもしれない。5月17日に都内のホテルで開かれた清和政策研究所(安倍派)のパーティーで、岸田文雄首相がミスをした。
「安倍(晋三)会長を始め、清和政策研究会の皆様方には、 官邸にあっては松野官房長官、萩生田経産大臣、岸防衛大臣、また末松文科大臣。党にあっては、福田総務会長……」
と、岸田首相がここまで言ったところで、会場から「おおっ!」というざわめきが発生。岸田首相はそれに気づいて「何か洩れがありましたか」と言ったが、誰も指摘しないので「福田総務会長、世耕参議院幹事長、岡田参議院国対委員長。こうした皆さま方に支えていただいております」と続けた。
実は岸田首相は「高木毅国対委員長」の名前をすっ飛ばしていた。高木国対委員長は復興大臣時代に週刊誌が暴いたスキャンダルゆえに「パンツ大臣」という有難くない渾名を付けられたが、実は与野党の議員の間でけっこう人気がある。通称“与野国”でカウンターパートナーを務める立憲民主党の馬淵澄夫国対委員長とも相性は悪くないようだ。
そんな高木国対委員長に、温厚な性格で知られる岸田首相がなんらかの悪意を抱いているはずもなく、たまたま名前を挙げるのを忘れていたに違いない。しかしそのミスを見逃さずに自分の点数にしようとした人物がその後に登場。茂木敏充幹事長だ。
「現在、安倍会長が率いる清和会、とかつてはお呼びしたのではないか。今は清和研。党内最大派閥多士済々であります。岸田内閣では、松野官房長官、萩生田経済産業大臣、岸防衛大臣、そして末松文部科学大臣。4人の閣僚を輩出しております。党には福田総務会長、世耕参議院幹事長。国会運営にあたっては高木……」
と、茂木幹事長がここまで言ったところで、会場にいた議員の集団から「おおっ!」という歓喜の声と拍手が沸き起こった。
だがそれにはわざと意を介さないそぶりで、茂木幹事長は岡田直樹参議院国対委員長の名前を挙げたところで、「ご案内の通り、通常国会は極めて順調に進んでおりまして、わが党の国会運営はまさに清和研が引っ張っている、こう言っても間違いない。そう考えております」と清和研を大いに持ち上げた。
しかしこれで止まらないのが茂木幹事長の悪いところだ。その後にわざわざ岸田首相との「記憶力の差」を見せつけるように、西村明宏副幹事長の名前まで挙げたのだ。
ここまで茂木氏が過剰に自己アピールする理由は、ポスト岸田を狙うために相違ない。しかし次期参議院選での相互推薦問題で友党である公明党を激怒させたなど、茂木幹事長には非常に痛い失点がある。だからこそ名誉挽回と存在感の押し出しに必死なのだろう。最近では自民党が劣勢の大阪に出向き、日本維新の会を「身を切る改革ではなく、身内に甘い政党」と批判して話題になった。確かに経歴詐称疑惑の岬麻紀衆議院議員を軽微な処分ですませるなど、日本維新の会にはそのように批判されても仕方ない点もあるが、それでも茂木幹事長だけには言われたくないはずだ。
このような茂木幹事長の性格が、近い将来に吉と出るか凶と出るか―。自民党がまともな政党だと信じたい。