衆議院選挙が終わり、候補者には容赦ない審判が下され、当選・落選が決まった。当選した人は、初登庁する姿や、議員バッチをつけてもらう姿が、テレビなどで「お決まりの絵」のように披露されているが、「落選した人」はどうなっているのだろうか。
最大の試練は「選挙費用の精算」
まず、投票日の翌日からお詫び行脚がはじまる。落下傘などで支援者が少ない人で1週間から2週間、支援者が多い人となると3カ月から半年、ただただお詫びとお礼に回るという日々が始まる。当選した時とは違い、訪問先の空気も重く、足取りは重い。候補者本人は淡々とこれをこなすわけだ。
同時に行われるのが、選挙事務所の撤去、加えて国会議員の場合は議員会館・議員宿舎の引き上げだ。続々と入居してくる初当選議員に、執務室や宿舎を明け渡さねばならない。任期中に溜まりに溜まった書類や備品たちをどこかに保管しなければならない。
そして、「選挙費用の清算」という最大の試練が訪れる。
事務所の借り上げ、印刷費、人件費、電話等備品のリース代など…。大きい選挙の場合、ほとんど本人が知らないところで湯水のように使われた、それら費用の清算が迫られる。場合によっては、借り入れによって選挙費用を賄っているケースもあり、最悪のケースでは夜逃げというシナリオもありうる。事実「当選しなけければ夜逃げするしかなかった」と話す現職議員に何度も出くわしたし、選挙後行方知れずの方もいる。まさに、落選は地獄の一丁目だといえよう。
税金は忘れたころにやってくる
これらを乗り越えて、お詫び行脚を済ませたころにやってくるのが、税金だ。
市民税などは前年度所得に掛かるので、現職議員が落選し無一文の無職になっていようとも前年度並みの税金が来る。これは落選者共通の悩みで、百万単位での税金の支払いに四苦八苦する方は非常に多い。私の知人では学資保険を解約して捻出した者もいた。とにかく払わないわけにはいかないので借りてでも払う。ここまで来て、一旦選挙の整理は終わる。
そして、次に引退するのか、もう一度頑張るのかという進退だ。基本的にここまでは支援してもらった手前すぐに辞めるとは言えず、「次も頑張る」というケースが多いが、実際は引退を心に決めている者もいる。
先立つものがないと続かない政治の世界
引退組にせよ再チャレンジ組にせよ、逃げられないのはお金の話。霞を食って生きられない。資金に余裕がある者は躊躇なく再チャレンジを選べるが、先立つものがないと再チャレンジもままならない。
実際、落選し続けてもチャレンジし続けている人は例外なく何らかの資金的なバックボーンがある者に限られる。仮に多くの支援者がカンパをして支えてくれたとしても、それは政治活動の為の資金であって、生活費には充てられない。「勝つまでやり続ける!」というのは簡単だが、兵糧尽きて戦が続けられないのと同様、お金が尽きたら継続はできない。
「今度こそ」と歯を食いしばりながら、一方で「明日からの生活どうしよう」と頭を抱えているのが落選者の今だというのが現実なのだ。