ただの頭痛と症状が似ている? 「脳動脈解離」に要注意 サインと治療法を医師が解説

ドクター備忘録

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“動脈解離”と聞くと、命にかかわる危険性のある大動脈解離をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、動脈解離は大動脈だけでなく、脳でも起こる症状なのです。大動脈解離との違いや症状の特徴、さらに意外な治療方法などについて、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――動脈解離と聞くと大動脈のイメージがあるのですが、脳でも動脈解離が起こるのですか?

大動脈とは症状が大きく異なりますが、脳でも動脈解離は起こります。脳で起こる動脈解離の症状は、ただの頭痛だと思われることが非常に多いんです。“解離”とは、血管の壁が裂けてしまうことをいいます。動脈の壁は3層の膜から成っているのですが、そのうちのいずれかが裂けてしまい、裂け目に血液が入り込んでしまうことで膨れ上がり、動脈瘤(どうみゃくりゅう)のようになることもあります。大動脈と同様に、この膨れ上がった部分が外側に破れることで出血が起こり、脳ではくも膜下出血が引き起こされるんです。また、血管の壁が裂けた場所に血液が入り込むと、脳に繋がる細い血管が塞がってしまうこともあるんです。

――脳動脈解離は非常にシリアスな病気なんですね。

そうですね。この脳動脈解離は、脳梗塞を引き起こす危険性もあります。しかし、くも膜下出血や脳梗塞を起こす方もいらっしゃいますが、頭痛以外の症状が出ないという方も多いんです。頭痛以外の症状が出ない場合、原因が脳動脈解離であると見つけづらいという難点があります。脳動脈解離を起こしていると判明すると、安静にしていただくために1週間ほど入院していただくことになりますが、ほかに症状も出ず治る方がほとんどですね。

――頭痛以外に身体にサインは出ないのでしょうか?

頭痛以外のサインが出ることがあるとすれば、脳梗塞の症状や、あるいはその時点ですでにくも膜下出血になってしまっているということになりますね。

――脳動脈解離になった場合、どのような治療が行われるのでしょうか?

基本的には、血圧を下げて安静にし治るのを待つ自然治癒が主となっています。症状が悪化してしまっている場合には、破れた血管を詰めたり、それ以上梗塞が広がらないように血栓予防薬を投与するなどの治療法があります。“解離”の時点では血管が破れてしまっているわけではありませんので、修復を待つというのが主な治療法になるんです。

――症状が頭痛だけですと、なかなか病院に行くきっかけを掴みづらいですね。

そうですね。首の筋肉がこわばって起こる頚性頭痛(けいせいずつう)との区別がつきづらく、さらにその違いはCT検査ではわからないため、MRIを撮るのが唯一の発見方法ですね。初期段階では非常に危険な病気というわけではありませんが、症状が見つかった際には警戒しなければなりません。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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