転倒から発症も 脳出血の一種「外傷性くも膜下出血」とは 症状や処置について医師が解説

ドクター備忘録

 脳出血の一種である「くも膜下出血」。一般的には脳表面にある血管の膨らみが破裂することで起こる脳表面への出血を指しますが、ほかに「外傷性くも膜下出血」という症状があることをご存知でしょうか? 発症原因や通常のくも膜下出血との違いなどについて、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――通常のくも膜下出血はどのように起こるのでしょうか?

くも膜下出血とは脳出血の一種で、脳の表面にある動脈の膨らみが突然破裂し、血液が脳表面へと広がる症状を指します。この症状は寝ている間に発症することもあります。

――では、外傷性くも膜下出血はどのようなときに起こるのですか?

くも膜の下で出血が起こるものをすべて「くも膜下出血」と呼ぶため同じではあるのですが、なかでもケガが原因で出血するものを「外傷性くも膜下出血」といいます。交通事故や転倒などのケガにより脳の表面に傷がつき、そこから流れ出た血液が脳の表面に広がった状態を指します。

――打撲により出血することはあるかと思うのですが、くも膜下出血につながるケースは多いのですか?

そうですね、高齢者の転倒などの場合は特に多いですね。高所から地面に打ちつけると頭の中で脳が大きく揺れ、その際ひずみのできた部分の脳がつぶれてしまうことがあります。その表面から血液が出ると、くも膜下出血になります。当然脳内にも出血する可能性があります。

――外傷性くも膜下出血の場合、脳内と脳の表面どちらで出血することが多いのでしょうか?

純粋なくも膜下出血であれば、脳内で出血が起こることはありません。しかし、外傷性くも膜下出血の場合は脳内と脳の表面、両方で出血することが多いです。くも膜下出血のほかに、脳挫傷、硬膜下血腫(こうまっかけっしゅ)などが起こる可能性があります。

――どのような症状が出るのでしょうか?

くも膜下腔(くもまっかくう)には痛みを感じる神経が多いため、激しい頭痛を感じるほか、吐き気を催すことがあります。

――放っておくのはよくないですよね。

あとから脳が出血するなど、くも膜下出血だけで終わっていない可能性が高いため、しっかりと診断を受けてしばらくは安静にして様子を見ないと危険ですね。

――出血を止めるためにはどのような処置が行われるのでしょうか?

外傷性くも膜下出血の場合、出血し続けるということは少なく、自然と止まっていることがほとんどです。たとえば、脳内に大きな血溜まりができている場合などは手術で取り除くこともありますが、出血も少なく自然と血が止まった場合にはそのまま吸収されるのを待つことになります。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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