落語家桂鷹治(たかじ)さん(32)が自身の昼ごはんを記録したTwitter投稿「シカメシ」が注目を集めています。東京都内のそば店や落語会で訪れた地方の名物などを写真付きで紹介。Twitterの制限文字数140字を目一杯使った投稿文は落語家らしいリズムのよさで読む人を引きつけます。昨年末には投稿2000日の記念イベントを開催した鷹治さんに話を聞きました。
歌丸師匠との思い出に3.4万いいね
愛知県岡崎市出身の鷹治さんは2012年3月、桂平治さん(現、文治さん)に入門。二ツ目昇進初日の2016年6月11日、先輩がごちそうしてくれたラーメンを自身のTwitterに投稿したのが「シカメシ」の始まりです。
「たまたま先輩にごちそうになったラーメンを、これも始めたばかりのTwitterのネタにしました。(落語会などの)宣伝ばかりだと面白みがなく、殺風景に思い、何か宣伝以外の投稿を考えていたタイミングでした。もともとNHKの『サラメシ』をよく見ていたことと、人気漫画でドラマ化もされた『孤独のグルメ』の影響も受けて、噺家の飯から『シカメシ』というハッシュタグを思い付きました」
一番大きかった反響は桂歌丸さんの好物、崎陽軒の弁当「横濱チャーハン」を紹介した投稿。歌丸さんが亡くなった翌日の2018年7月3日、弁当の写真とともに「これからは食べる度に師匠を思い出す」と静かに胸の内を明かすと、3.4万を超えるいいねがつきました。
「笑点」新メンバー、落語家の桂宮治さんもシカメシの存在を知る一人。2021年には自身の公式Twitterで紹介。JR五反田駅で駅そばを食べた鷹治さんに対し、ハートマーク入りで「美味しそうですね」とした上で、七味の使い方を鋭くツッコミながら盛り上げました。
「シカメシの人」仕事にも影響
ある日の投稿です。
「浅草、翁そばの冷したぬき(+生玉子) カリカリの揚げ玉がたっぷり、ほうれん草と鳴門巻の彩り、真ん中に玉落とし。別皿の刻み葱を投入して、お汁に浸かった底とぐるっと天地返し。幅広のもちもち蕎麦に玉子を絡めて、わさびを利かせてざくざく手繰る。〆の濃い蕎麦湯の熱で、玉子ふわふわ。#シカメシ」(2022年4月7日投稿より)
食事をしながら頭の中で140文字の文章を練ります。「なるべく食感や風味を伝えたいので、あまり感情的なことは書かないようにしています。『おいしい』も使いません。事実のみ。読んだ人が食べた感じになってもらえれば、疑似体験してもらえればと思っています」
2021年12月には投稿2000日を記念したイベント「シカメシ2000日の会」を開催。食にまつわる2つの演目を披露したり、質疑応答コーナーを設けたり、ファンにとっては充実の内容となりました。
投稿は仕事にも影響しています。
「『シカメシの人』という印象がついて、とりあえず多くの人に認知されることになりました。2000日の会にも『シカメシをずっと見ていて、落語会は初めて』というお客様がいらっしゃいました。食事の席で料理の写真を撮影していると『シカメシだ』『シカメシ用?』と反応されることも増えました。ありがたいです。あとは『B級グルメに一家言ある』と紹介されることも。地方に行ったときは土地の名物を教えてもらいやすくなりました」
一方で、継続には苦労もあるようで「家から出たくない日もありました」と笑います。「毎日、同じお店ではつまらないので、近所の江古田、桜台界隈のランチ情報を網羅して、なるべく多彩になるよう考えています。また別の日に同じ店の同じ料理を食べても文章を変えなくてはいけなくて、140字に収める大変さに気が付きました。接客業と落語会の類似性、受付とお勘定、もてなし方などの共通点を随分勉強させていただいたと思います」
ファンからは「サラメシで取材してほしい」「次は2500回イベントを」などの声も上がっていますが、今後は。鷹治さんは「淡々と、ですね」としながらも「プロジェクターとスクリーンを使って、実際の写真を映しながら質疑応答やトークがしてみたいです。これは3000日の会になるのか分かりませんが」とさらなる夢を語りました。
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お昼ごはんに迷ったらTwitterで「#シカメシ」と検索してみては。鷹治さんがいい店にいざなってくれますよ。