石垣の「神業ビフォーアフター」をネット民が大絶賛 塗装造形プロの仕事がスゴかった「綺麗にするよりも難しそう」

太田 真弓 太田 真弓

新しいコンクリートが、まるで昔からあったように変身した塗装技術の精巧さがTwitter上で話題です。こちらを手がけた「C.S.Model Design」(@CSModelDesign)のタナカさんにお話を伺いました。

「大工の友人に現場に連れて行かれて『馴染ませて』と言われたので4時間半でやっつけました」と、#これを見た人は加工前と加工後を貼れ のハッシュタグと共に投稿された2枚の写真。

1枚には、石垣の階段に備え付けられた手すりの支柱部分がコンクリートでキレイに舗装されている様子が。もう1枚には、その支柱部分を配色や陰影、地衣類までしっかりと経年変化(エイジング)させ、完全に周囲の石垣に馴染ませた様子が写っています。

「どんな塗料なのかすごく気になる!」
「テーマパークとかのエイジングはよく聞きますが、こんな普通の風景の中でここまで加工されてるとは驚きました。お見事です」
「“馴染ませて”というお願いの仕方があったということにびっくりしてる」
「凄いなぁ、4時間半で50年くらい経過してる」
「墓石かと思ってびっくりして、さらにコンクリートをこんな加工ができるのかと2度ビックリしました」
「もう何十年も昔からありそうな感じですね…」
「地衣類の再現が素晴らしいですね!」
「神業ビフォーアフター」
「タイム風呂敷でも使ったのか?というくらいの古めかしさ演出に驚きです。綺麗にするよりも逆に難しそう」

この出来映えに、ネット民も大興奮!現在、10万件を超えるのいいねがつき、Twitter上でその技術の高さが話題となっています。

タナカさんは現在、造形工房で原型と塗装を担当しており、大小問わず様々な造形を手がけていて、ここ数年は飲食店内造形物などが多いのだそう。以前はロボット恐竜の会社やFRP(繊維強化プラスチック)メインのテーマパーク等の造形物を作る工房、二足歩行する恐竜ショーの恐竜を作る会社などに在籍された経歴をお持ちです。ティラノサウルスが大好きな原型師・ツキムラさんと共に「C.S.Model Design」を運営されています。

また、色弱であり、「赤緑色弱」という感覚をお持ちだというタナカさんにお話をお伺いしました。

塗装と造形を得意とする“レぺゼン色弱”です!

――こちらの塗装を請け負われたのはいつ頃のことでしょうか?

結構前の写真で、2016年の2月初旬です。寒いし日没も早い時期の屋外作業でした。

――どういった場所なのでしょうか?

道路から家屋へと登る階段です。

――事前に打ち合わせなどはありましたか?

一緒にタイ旅行に行って帰国したらそのまま連行されました(笑)。「馴染ませて」についての指定は特になく、細かい事は言われず、「おまかせ」って感じでした。一度現場調査に行って写真を撮って調色してから臨みましたが、現場で微調整はしました。

――「馴染ませて」と依頼された時、どのような感想を?

赤緑色弱(最近は少数派色覚とか言うのでしょうか)で色がよく分からないので「色が違ったらゴメンね」と思いました。ですが、色は少し違っても質感表現は得意なのでそちらで乗り切ろうと思いました。

――色弱なのですか!? びっくりです。

もちろん色弱の程度にもよりますが、私の場合は絵の具の色の名前のラベルを隠されると緑と茶色がほぼ分かりませんし、灰色とピンクと水色と紫色もごっちゃになります。パステルカラーはヤバイです。夜空の星も全部クリーム色です。

しかし、混色の理論を覚えて、繰り返しの練習次第でこのくらいの事が出来るようになりました。

日本人男性の約5%は色弱だったと思うのですが、なかなかカミングアウトも出来ずコンプレックスを抱えている人も多いと思います。“レぺゼン色弱”として「こんなことも出来ますよ!」となんらかの希望を与えられたら良いなと思います。

脳内で塗装を何度もシミュレーションし、ベストな手順を決める

――4時間半という短時間!まさに「職人技」ですね。

もともと現場での時間は6~8時間くらいあると良いなと思っていましたが、いつタイムアップになっても良いようにしました。夕方になり暗くなったのでタイムアップで結果的に4時間半しかもらえませんでした。

具体的な作業工程としては、
「まず最初に全部に基本色を塗る。コンクリートの地の色を残さない」
   ↓
「雑でも良いから汚す。汚したついでに周囲の岩の色に似せる」
   ↓
「最後に余裕があれば地衣類(苔っぽいやつ)を描く」
でした。屋外用のシーラー(水性塗料をしっかりとのせるための粘着剤、補強するもの)を塗って1時間、屋外用の水性塗料でバシャバシャやって粘菌っぽいのを描き込んでみて3時間半が経過していました。全てハケ塗りです。

納期(日没)は絶対に守らないとダメなので、完成度よりスピードを優先しました。

――塗装するにあたり、難しかった部分や工夫された部分などあれば教えてください。

赤緑色弱ですし、現場で調色する事は時間的に避けたかったので、事前に作った色を職場の人などに見てもらいました。

いつもやる事ですが、脳内で塗装を何度もいろいろな方法でやってみてベストな手順を考えてその通りに塗りました。うまくいかない時もありますが…。

――同じようなご依頼のご経験は?

短時間&屋外の仕事はこれだけです。当時、水族館の義岩の塗装や恐竜の化石のレプリカの塗装などを多くやっていたので同じような感覚で出来ました。

――完成後、依頼された大工さんのご感想は?

喜んでいました。あまり言葉では伝えてくれず、後日行った南伊豆での釣りの全費用(交通費、宿泊費、全飲食費、乗船代金)を奢ってくれました。もちろん作業工賃も貰っていましたが。おかげで4.4kgのマハタが釣れて私も喜びました。帰り道、SAで500円もするソフトクリームも奢ってくれたので喜びが伝わってきました。

――大工さんとの関係もなんだか微笑ましいです。現在、こちらのツイートが大きな反響を呼んでいます。

時間をかけてじっくり取り組んだ造形物とかではなく、スポーツ感覚でガシガシ雑にやった仕事がバズって複雑な気持ちです。なんとなく「粘菌」と書いてしまったところを「地衣類」と指摘していただいたりして勉強にもなりました。

――今後もこのような依頼があれば引き受けてみたいでしょうか?

日帰りで出来たり自宅から通える範囲なら!あとは「楽しそう」と思えたらやっても良いかもと思います。専門家の監修がついたお仕事などは勉強になるので好きです。

そこそこじっくりと取り組める予算多めのお仕事の依頼があれば嬉しいですね。まあ自分の得意な造形スタイルが「速い・安い・それっぽい」なのでなかなか来ないと思いますけど(笑)。

6月には、タナカさんが原型と彩色見本を担当した「恐竜図鑑 スタンドフィギュア カプセルトイ」(株式会社クオリア)が再販予定。ティラノサウルスはツキムラさんが担当だそう。こちらもチェックを。

【C.S.Model Design関連情報】
■Twitter https://twitter.com/CSModelDesign
■BOOTH https://csmodeldesign.booth.pm

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