「マスク外していいよ」ってどうなっているの? 日米の出入国事情、学会で渡米した歯科医に聞いた

山本 智行 山本 智行

 大手旅行代理店や航空会社がハワイへの観光ツアーを再開するようです。期待が高まる一方で、感染状況は高止まり気味ですし、実際に海外への出入国はどうなっているのか、気になるところです。このたび、吉本興業のピン芸人"パンヂー陳”こと陳明裕さんが渡米していたというので事情を聞いてみました。陳さん、歯科医でもあります。学会だったそうです。(聞き手・山本 智行)

--お帰りなさいっていうか、新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置が解除されたとはいえ、いまだ第6波の波も下がりきっていないこの時期に、またアメリカ行って来はったんですか?

陳明裕(以下、陳):僕だってたった3日間の学会に参加するためだけにフロリダくんだりまで行きたくなかったですよ。

--確か、昨年ニューヨーク州立大に教えに行きはった後は、ずーっと、自宅にひきこもってはったけど。

陳:人をニートみたいに言わんといて下さい!あの頃は、まだ2週間の自宅待機が義務付けられてた上に公共交通機関の利用が禁じられていました。だから羽田から伊丹へ乗り継ぎ便への搭乗もできなかったんで、仕方なく空港でレンタカーを借りて。しかも、空きがなくて、散々探してやっと借りられたのが車いすが載らせれる大きめの特殊な車両。大阪までの乗り捨て料金とか加算されてレンタカー代だけで10万近くかかりました。

--で、今回は?

陳:それに比べると、今回はワクチン3回接種していて、空港での抗原検査が陰性なら隔離期間なし、でしたからずっと楽でした。

--ワクチン3回打った後で良かったですね、まだやったら、またレンタカーで大阪まで帰って自宅待機せなあかんとこやったんですね。

陳:それが、外務省のホームページには「入国後の待機のため自宅等まで移動する際は、公共交通機関の使用が可能となります。ただし、入国時の検査(検体採取時)から24時間以内に移動が完了し、かつ自宅等までの最短経路での移動に限ります」となっていますので、落ちたものを食べる時の3秒ルールみたいに、なぜか24時間以内なら公共交通機関の利用が可能になったんです。

--3秒ルールはともかく、空港に入った時の検査が陰性でも、その1回だけじゃ、ちょっと心配ですね。

陳:そもそも、飛行機搭乗の72時間前に日本政府の指定するやり方で指定のフォームに、お医者さんのサインの入った陰性証明書をもらった人しか飛行機に乗れてません。ですからアメリカなどに比べると厳しいとは思います。一方のアメリカは到着時の検査はなく、陰性証明も単純に2日前までにもらいさえすれば、書式も問いませんので。

--日本の場合の72時間ということは3日前、日本の方が緩い気もしますが?

陳:僕もはじめはそう思ったんですが、日付で2日という事は最長71時間59分59秒あるので実質ほとんど違いはないようです。ただ、僕の飛行機は月曜だったので土日は医者が休みで1時の便だから1時以降で医者が閉まる5時までにサインしてもらう必要がありました。しかも275ドルも払って!でもね。もしこれが5時以降の便だったら開いてる医者もなく、便を変更しなきゃいけないところだったんですよ。

--そうなんですね。なんかややこしいですね。

陳:さらに事前に「ココア」と「MySOS」のアプリをスマホにダウンロードして、その陰性証明とワクチン接種済証明をアプリに取り込んでMySOSの画面が赤から緑に変化しないといけないんで、大変でした。

タクシー運転手「マスク外していいよ」

--スマホ、持ってない人やお年寄りはどうするんですか?

陳:個別に対応してくれるようですが、何も問題のなかった僕でも着陸から飛行場を出るまでに数時間かかりましたから、それこそ、その何倍もの時間を覚悟しなきゃならないと思います。今度のゴールデンウイークに、もし海外旅行を計画されてる方は、お気を付け下さい。あと、現地の情報収集にはこの本を読んどいた方が良いですよ。

--はー?なんで観光地の情報収集に、ゴルゴ13の本なんですか?そんな、ゴールデンウイークにスナイパーしに外国に行くような人はデューク東郷以外おらんでしょう!?

陳:よう見て下さい!普通のゴルゴ13じゃのうて、パスポートセンターなどでもらえる外務省が2017年からゴルゴ13とコラボして出している本で、最新の海外安全情報をメールで受け取れる「たびレジ」のPR本です。

--なーるほど。で、フロリダのどこに行ってはったんですか?

陳:タンパビーチです。ヤンキースやカブスなどメジャーリーグのキャンプ地で有名なタンパです。

--知ってます。行ったことないけど。田中のマー君もかつてはあそこでキャンプ参加してましたね。高級ビーチリゾートですね。よろしいなー。

陳:だから矯正歯科の学会ですから仕事ですって。

--その割には、優雅に美術館とかで写真撮ってはりますやん。

陳:あっちの学会は懇親会の会場に美術館や博物館を貸し切りで使ったりするんですよ。今回は近くのダリ美術館でありました。ちゃんと館内はダリのイラスト等でマスクの装着を呼び掛けていましたが、米国内でも地域差があるようで、フロリダは残念ながら意識が低かったです。私が客員教授を務めるニューヨーク州立大の先生たちも参加していたのですが、彼らもビックリするほどでした。

--ニュースを見ていても街行く人はマスクしていない人が多い。飛行機やバスではどうなんですか?

陳:さすがに公共交通機関内はマスクの装着が義務付けられています。みんな降ろされたら困るので、従っていますが、今回驚いたのがウーバータクシーです。アプリで呼ぶには“マスクを装着して乗車します”の項目にチェックを入れないと配車手配できないのですが、いざ乗ってみると運転手がマスクをしていない。それどころか、僕にまで「マスク外していいよ」と言ってきました。

--で、外しはったんですか?

陳:ここ数年、外でのマスクは習慣になっていますので何だか人前でマスクを外すのは顔のパンツを脱ぐみたいな感覚があってちょっと抵抗がありますのでね。しかも、その運転手の爺さんは「先月はコロナにかかって、熱がなかなか下がらなかったので仕事ができず大変だったが、やっと復帰できた」って言ってたので「熱が下がったらすぐ仕事に復帰したんかい!?」って心の中で突っ込みを入れつつ窓を全開し、極力無駄な会話を慎んでいました。

--お国柄なんですかね。なかなか注意もしづらいでしょう。

陳:いや、降りた後にアプリ内のドライバー評価で「マスクをしていなかった」「不要な会話が多かった」って告げ口してやりましたよ。フンドシの紐を締め直してもらうためにも。

--そのくらいで、フンドシの紐を締め直してくれると良いのですが…。

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