生きる気力を失った男と壊れかけのロボットの成長譚 劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」5月から全国公演

黒川 裕生 黒川 裕生

劇団四季の16年ぶりとなるオリジナル一般ミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」の全国公演が5月14日からスタートする。人間に代わってアンドロイドが家事や仕事をこなす近未来を舞台に、両親を亡くして無気力に日々を過ごす主人公ベンと、壊れかけのロボット・タングとの出会いと絆、そして成長を描く物語。2人の俳優が操るタングの繊細でどこか“人間臭い”動きも見どころの本作の魅力について、ベン役の田邊真也さん、タング役の生形(うぶかた)理菜さんと渡邊寛中(かんな)さんが語ってくれた。

「ロボット—」はイギリスの小説家デボラ・インストールさんの同名小説が原作。2015年に出版され、世界各国でロングセラーを記録している。特に日本での人気が高いことで知られており、続編である「ロボット・イン・ザ・ハウス」「ロボット・イン・ザ・スクール」は本国に先駆けて日本で先行発売されたほど。2022年8月には二宮和也さん主演で本作を映画化した「TANG タング」も公開される。

劇団四季が製作する一般ミュージカルとしては、2004年の「ミュージカル南十字星」以来16年ぶりの新作となる。2020年10月に東京で初演を迎えて以降、福岡、東京再演を経て2022年2月から京都公演が続いており(4月16日まで)、5月14日からは神奈川を皮切りに全国の劇場を回る。

コロナ禍を乗り越えて

コロナ禍で稽古がままならない時期を乗り越えてつくり上げた、キャストやスタッフにとっても思い入れの強い「ロボット—」。田邊さんは「準備している間、本当に本番まで辿り着けるのだろうか、公演を続けられるのだろうかという不安もありました」と振り返りつつ、「(2020年の自粛期間中は)人との関わりにずっと飢えていたし、誰かがそばにいてくれるのがどれだけありがたいことなのかを痛感する日々でした。この経験は人生の感動や生きる喜びを伝える作品のメッセージとも重なる部分が多く、観客の皆さんにもきっと前に進む力を感じていただけると思います」と話した。

1996年に劇団四季の研究所に入て以来、数々の作品に出演してきた田邊さん。1幕での無気力なキャラクターから、タングとの旅を通じてベンが少しずつ自信を取り戻していく様子を丁寧に演じ、2幕では力強い歌声も響かせている。「1幕と2幕のベンの変化を上手く表現できたときは、自分でも手応えを感じますね」

「何度もぶつかり、喧嘩もした」タング役の2人

一方、パペットのタングを操る俳優たちは「ロボットが“生きている”ように見せる」ため、血のにじむような努力を重ねたそうだ。

「タングの動きをひとつひとつ分解して、それを組み立てて命を吹き込んでいく作業がとにかく大変でした。稽古中は2人で何度もぶつかったし、家族でもしないようなひどい喧嘩もしました(笑)」(渡邊さん)

「今回は『俳優』というより『ロボットに命を吹き込むこと』に全力を注ぎました。2人が阿吽の呼吸で動けるような信頼関係を築くために、喧嘩も必要な経験だったと思います」(生形さん)

こうして生み出された愛らしいタングは、観客からの人気も抜群だ。カーテンコールでは、大人も子供もタングに向かって笑顔で手を振るのがおなじみの光景になっている。2人は「タングを通じて世界が輝いて見える…それを楽しみながら演じています」と声を弾ませる。

5月14日から始まる全国公演に向けて、3人は「素晴らしいキャスト、スタッフと力を合わせ、初演からどんどんブラッシュアップしていっています。小さな幸せがちりばめられていて、見た人の背中をそっと押すような作品。全国の皆さんにも早くお届けしたいです」と意気込んでいる。

公演日程やチケットなどの情報は公式サイトで。

https://www.shiki.jp/applause/robot/

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