JR西日本は3月29日に京阪神エリアを中心とする近畿5府県の一部区間で運賃を見直すことを発表しました。事実上の値上げです。生活に直結するだけに、気になるところです。
対象区間は大阪の電車特定区間
JR西日本によりますと、今回の運賃改定の対象区間は「割安な特定区間」の一部としています。
設定以来、国鉄時代も含めて消費税改定を除き運賃水準を維持してきました。しかし新型コロナウイルス感染症による厳しい経営状況や市場環境の変化を受け、運賃改定に踏み切りました。
改定は普通運賃と通勤定期券が対象となり、通学定期券は据え置かれます。実施時期は2023年4月1日購入分からです。
大阪~神戸間はJRも私鉄も同額に
気になる改定後の運賃ですが、普通運賃は全体的に10円~40円値上がります。大阪~神戸間は410円から450円に、大阪~高槻間は260円から280円になります。また6カ月通勤定期券は大阪~神戸間が6万180円から6万9210円に、大阪~高槻間は3万8020円から4万3730円になります。
また6カ月通勤定期券のみ見直す区間は65区間にも及びます。大阪~京都間は8万780円から8万5320円になり、4540円値上がります。
並行私鉄と比較してみましょう。阪急大阪梅田~高速神戸間34.5キロの運賃は450円です。ちなみに大阪梅田~神戸三宮間32.3キロは320円で、神戸高速線内(阪急神戸三宮・阪神元町以西)に入ると割高感を感じる方は少なくありません。神戸高速線は今までの経緯から独自の運賃体系を採用し、同線では加算運賃が発生します。
2023年4月からJR大阪~神戸間が阪急大阪梅田~高速神戸間と同額450円になることから、乗客心理にも影響をもたらすかもしれません。たとえば大阪市内の茶屋町から高速神戸駅が最寄りのハーバーランドへ遊びに行く際、これまで以上に茶屋町に近い阪急を選ぶことが予想されます。もっとも、これは阪急・阪神が値上げをしない、というのが前提ですが。
次にJR大阪~六甲道間と阪急大阪梅田~六甲間の6カ月通勤定期券を比較します。JRは現行の6万180円から6万5560円になります。阪急は6万5560円なので来年4月からはJRと同額となります。「通勤定期券はJRが安い」とよく耳にしましたが、この常識も一部区間とはいえ変わります。
東と西で違う値上げ事情
JR東日本も4月5日に一部区間で10円の運賃値上げを発表。同時に通勤定期券も上がります。実施時期は2023年3月頃です。値上げの理由として、今後のバリアフリー設備の整備計画を挙げています。
昨年12月24日、国土交通省は「鉄道駅のバリアフリー化により受益する全ての利用者に薄く広く負担を頂く制度」(鉄道駅バリアフリー料金制度)の創設を発表しました。JR東日本はこの制度を活用する方針で、2031年度末頃までに330駅758番線にホームドアを設置するなどバリアフリー化を進めていきます。
同じ値上げでも事情が異なれば利用者の受け止めも違うもの。運賃値上げの際には利用者に対して丁寧な説明が鉄道事業者には求められています。