4月になり街にはフレッシュな新社会人があふれています。若者たちへの仕事のアドバイスが五万とある中、30代から50代のベテランと呼ばれる人たちは仕事の悩みとどう向き合っているのでしょうか。そんな世代に向け、フジテレビのアナウンサーとして活躍し、現在はフリーランスとして働く近藤サトさんに聞きました。「近藤さんは仕事で壁にぶち当たったとき、どう乗り越えていますか」
フジテレビ退社「あんまり未練はなかったです」
私は1991年4月にフジテレビ入社し、1998年9月に退社しました。当時は女性に求められる仕事の質が決まっていて、すでに先細りでした。会社員としてずっとフジテレビに居続けることはできるかもしれないけれど、どう残るのか競争がありました。アナウンサーとして採用されながら、一般職に辞令が出る人もいました。それで退社を決意しました。あんまり未練はなかったですし、会社にも引き止められなかったですし(笑)。
フジテレビをやめて以来、何か仕事で壁にぶち当たったときには「どうしよう。もう私、才能ない」とか「他にすごい人いっぱいいる」とか「この業界でやっていけない」とか悩むこともありました。そりゃいろいろあります。仕事も長きにわたり順風満帆にきたわけではありません。立ち止まったとき、つまずいたときに何を思うかです。
朗読の仕事をしたくて辞めたのに、朗読を全然やらなかった時期もあります。まわりの人に「朗読だけでは食べていけませんよ」と言われ、ああそうかと。食べていけなきゃだめだなと思って。朗読は置いておこうと。じゃあ何がいいんですかと聞くと「ゴールデンのバラエティーのナレーターだろう」と言われ。じゃあそこを目指そうと。
私自身、勝ち気でプライドが高いところがあると思っていますが、皆さんが思っていそうなプライドは全然ないんです。どんな人にも教えを請いたいと思うし、自分のことを立派だとも偉いだとも思ったことがないですし。まわりの人に助言をもらって、柔軟に別のステージへと。次々と変わり身は早いです。あんまりこだわりがないんですね。
足を引っ張るのも、支えてくれるのも…
私は助言者がいるところを見つけるのがうまいかもしれません。アドバイスしてくれる人はもともといたわけではなく、どうしようという時に頼りになりそうな人を探しに行こうと動きました。
一番足を引っ張るのも、支えてくれるのも、まわりの人間なんです。表裏一体というか、いいところも悪いところも持ち合わせていて。新しいことを始めようとするとき、今いる環境の上司や同僚に相談しては絶対にだめです。「今のままのあなたが好き」という人ばかりなので、新しいことをしようとしたら逆に引き止められます。あえて全然知らないところに行って、知らない人の中に入って「こういうことをしようと思う」と相談してみるのがいいかもしれません。
自分ができることって、自分が気付かないだけでたくさんあるんだと思います。これからの会社員はどんどん新しいことにチャレンジする、そういう時代になっていくのかなと思います。その新しいステージを提案できない会社は残れないと思います。
◆近藤サト(こんどう・さと)1968年岐阜県生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。1991年4月フジテレビ入社。1998年9月同局退社。フリーランスに転身後、テレビ番組のコメンテーターやナレーションなどを中心に活躍。日本大学芸術学部の特任教授も務める。2022年3月朗読バラエティチャンネル「サト読ム。」を開設。