山奥で一緒に暮らしていたおじいさんが急逝 残された犬はシェルターにひきこもり10年、ついに家族ができた!

岡部 充代 岡部 充代

 バズくんとウッディくんが保護施設を“卒業”したのは今年1月。実に10年3か月もシェルターで過ごしていました。そんな2頭の犬を家族に迎えてくれたのは、ボランティアとして長く彼らを見守ってきた間狩裕子さん。これ以上ない良縁でした。

バズくんはカメラが苦手

 バズくんとウッディくんはかつて山の中でおじいさんと暮らしていたそうです。「おじいさんとカラスだけを見て育った、と言われるほどの場所だったみたいですよ」(間狩さん)。そのおじいさんが急逝し、代わりにお世話してくれていた人も病気になったため、2011年10月に『認定NPO法人アニマルレフュージ関西(アーク)』にやって来ました。当時、2頭は4歳でした。

 愛らしい顔立ちで何度も声が掛かったそうですが、人と接する機会がほとんどなかったからでしょう、里親希望の方が近づくと隠れてしまい、「引き取るのはかえってかわいそう」といった理由で立候補を取り下げられてきました。音に敏感なバズくんは「パシャリ」という音が怖いのか、カメラも苦手。アークのブログに載っている写真は、ほとんどが木の陰や建物の陰から顔を半分のぞかせているバズくんでした。

 譲渡会などでは子犬、若くて健康な犬、人懐っこい犬に人気が集中します。入所当時のバズくんとウッディくんは2番目の条件をクリアしていましたが、年齢を重ねてシニアになると、すべてに当てはまらなくなり…。直近では2年半前に里親希望者が現れたそうですが、残念ながらご縁は繋がりませんでした。

 そんな2頭をずっと見守ってきたのが、アークで10年以上ボランティアを務める間狩さんです。バズくんたちとの思い出を尋ねると、「アークに来て1週間くらい、バズは小屋に“引きこもり”状態でした。私が中に入って首輪とハーネスを着けて引きずり出したんです(笑)。2~3週間たった頃には、他のボランティアさんが『バズがいない』と言うので探したら、小屋の下に穴を掘って入り込んでいたこともありましたね。それでも馴れているボランティアのことはよく分かっていて、鳴いて呼んでくれたりしましたよ。私の顔がオヤツに見えていたのかもしれませんけど(笑)」と笑顔で話してくれました。理由はどうあれ、間狩さんには心を許していたことが分かります。

ウッディくんは譲渡初日から尻尾フリフリ

 間狩さんは物心がついた頃から動物と暮らしており、アークの保護犬や保護猫も何頭か引き取ってきました。ただ、昨年2月に柴犬のオークくんを18歳、10月にミニチュアダックスのルックちゃんを17歳で見送ると、家には猫だけで犬のいない生活に。そこで今年に入り、バズくんとウッディくんを迎えることを決意したのです。タイミングよく引っ越したことも後押しになりました。

「前の家は交通量の多い場所でしたが、今は車通りも少なくて怖がりの2頭にはいい環境です。お散歩は1日に4回。時間はシェルターにいたときのスケジュールに合わせています。ウッディは小さい子供が苦手なので、時間帯と通る道には気を付けていますね」(間狩さん)

 バズくんとウッディくんの負担を少しでも減らそうという配慮がうかがえます。それまで一緒に暮らした元保護犬の中には、家の中で寝るのを嫌がったり、バケツからしか水を飲まなかったり、予期せぬ行動をする子もいたため心配していましたが、バズくんとウッディくんは初日から普通に水を飲み、ごはんを食べ、家の近くを散歩して排泄もバッチリ! ウッディくんにいたっては尻尾をフリフリしていたと言いますから、やはり10年来の付き合いになる間狩さんが家族になってくれたことは、2頭にとってとても大きなことだったのです。

シニア犬の魅力とは

 家の中では和室が2頭専用部屋(時々、猫ちゃんも入ってくるそう)ですが、いずれは「リビングにも自由に出入りしてくれるようになってほしいですね。少しずつ慣れてくれれば」と間狩さん。驚くことに、よりシャイなバズくんのほうが先にリビングに足を踏み入れたそうです。今年6月で15歳になる2頭ですが、これからどのような成長、変化を見せてくれるでしょうか。

 最後に、これまで主にシニア犬を家族に迎えてきた間狩さんに、その理由と魅力をお聞きしました。

「一緒に暮らせるのはわずかな年月だったとしても、幸せになってほしいから。ただそれだけです。シェルターでも手厚いお世話をしてもらっていますが、どうしても夏は暑い、冬は寒い、といったことがありますし、シニアになったら穏やかに過ごしてほしいじゃないですか。医療費は掛かりますけど(苦笑)、やんちゃな子犬と違って落ち着きがあるシニア犬は魅力的ですよ」

 アークには新しい家族との出会いを待つシニア犬がたくさんいます。その子たちにも一日も早く“赤い糸”が見つかりますように。

◆アークホームページ https://www.arkbark.net/

◆アークブログ http://arknashippo.blog90.fc2.com/

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