閉店した京老舗和菓子店の銘菓「涛々」を祇園の名店が受け継ぐ「愛情を断ち切らず、うちの菓子にもなるように」

京都新聞社 京都新聞社

 創業1903(明治36)年の老舗和菓子店「京華堂利保」(京都市左京区)が1月31日、のれんを下ろした。同店の銘菓で、茶道三千家の一つ、武者小路千家の家元好みの菓子「涛々(とうとう)」を受け継ぐことを決めたのは、京都市東山区祇園町北側の「鍵善良房」。15代目当主今西善也さん(49)は「歴史や思いが詰まった菓子。店のストーリーごと受け継ぎたい」と語る。

 約300年続く鍵善良房は、くずきりや水ようかんなどで知られる。京華堂利保とは、老舗でつくる「菓匠会」などを通じて長年交流してきた。

 内藤さんから打診があったのは昨秋。「(店を)やめはるらしいとは聞いていた。うちに頼んでくれた気持ちがうれしかったし、断ることは全く考えなかった」。武者小路千家の家元にも快諾されたという。

 ただ、迷いはないものの悩みはある。「涛々」は、こしあんに大徳寺納豆を練り込んだ菓子だが、京華堂利保とはあんに使う小豆が違うため、レシピを引き継いでも全く同じ味にはならないという。「ファンの方の理解が得られるか」と打ち明ける。

 試作を経て、早ければ3月中にも販売を始める予定。今西さんは「『涛々』にまとう愛情を断ち切らず、うちの菓子にもなるように。難しいけどやらなあかん」と力を込めた。

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