京都・祇園で愛されたおばあちゃんのおはぎ 一度は閉店も、味と心を受け継ぐ後継者が誕生

塩屋 薫 塩屋 薫

「小さな福が多くありますように」そんな思いをこめ、京都・祇園の安井金比羅宮の近くでおばあちゃんが手作りしていたおはぎの店「祇園おはぎ 小多福(おたふく)」。2021年5月に惜しまれつつ閉店しましたが、その暖簾が「おはぎ ぎおん 小多福」として引き継がれることになりました。

「小多福」は、亡き父が好きだったおはぎを作り、知人に配っていたという川崎加津子さんが知人に勧められ70歳の時にひとりで始めたお店。2008年の開業以来、おばあちゃんの小さな手で真ん丸に丸められた、カラフルで柔らかいおはぎが多くの人に愛されてきました。

高齢となり体力面でも負担が大きくなってきたこともあり、後継者を探していたところ、京都で「おぼろ豆富(豆腐)」を製造販売する「京味食品」がお店を移転し引き継ぐことに。

きっかけについて同社の「小多福」担当・土屋さんは「女将さんがうちの豆腐をよく購入してくださっていて、おはぎも一緒に売ったら?とお声がけいただいたんです。お客さまに個人ではなく会社が継いだとがっかりされないよう、必死で女将さんに作り方を習いました」と振り返ります。

閉店までの約4カ月間、週2~3回はお店で早朝から女将さんとともにおはぎを作ってきた土屋さん。1番苦労したのはもち米の水加減と言い、「時間がたってもふっくら柔らかい、もち米100%なのがこのおはぎの魅力。女将さんはその日の気温などに合わせ、勘や目分量で作られるので、ちょっと計らせてください!と何cc入れたか毎回メモしていましたね。帰宅後も、時間経過によるかたさを確認してみたり」と試行錯誤したそう。

新店では、平日は8種、土日祝は12種の完全無添加の素材によるおはぎが並び、日替わりの味も。「粒あん」「こしあん」「きなこ」は女将さん直伝の味を再現し、厳選した北海道産大納言や何種もブレンドした砂糖で作られた甘さ控えめのあんこが使われています。

さらに「今までの味を受け継ぎつつ、京都の和菓子文化の進化も」と、かつての「古代米」と「青のり」をあわせたり、「黒ごま」はもち米を甘じょっぱい醤油味にアレンジする試みも。そして、「女将さんのおはぎは見た目も楽しかったので、そのワクワク感も出していけたら」と、スパイスやハーブなどを使った新しいおはぎも続々と誕生しています。

コンポートも手作りする「りんご」、香ばしい茶葉&ミルク入りの「ほうじ茶ラテ」など、和洋のテイストが散りばめられた新作は今後も季節ごとに変わる予定で、好みの2種を選べる「おたふく舟」は気軽なテイクアウト用におすすめだそう。

土屋さんは「女将さんとはよく電話でお話し、新店を喜んでくれています。お客さまとのおしゃべりを大切にされていたので、味だけでなく、この店も地域に根付いた人との繋がりを広げていけたらと思っています。すべての始まりは「縁」。これまでとこれからの縁も楽しみに、おはぎを食べた方に小さな幸せを感じてもらえるお店であり続けられるよう努力していきたいです」と笑顔で話してくれました。

新店は旧店舗から北東へ徒歩で約2~3分の場所にあり、2022年1月2日の開業以来「お店が残ってよかった」と喜ぶ常連客らが訪れ、昼過ぎには売り切れになる種類もあるそうです。おはぎは1個220円~。営業は11時~17時、月・火曜休み。京阪「祇園四条駅」より徒歩10分。

「おはぎ ぎおん 小多福」
場所:京都市東山区下弁天町51-4
営業:11:00~17:00(月火休み)
公式サイト https://otafuku-ohagi.com/
Instagram https://www.instagram.com/otafuku.ohagi/

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