アヲハタのジャム、なぜフタが勝手に閉まる? ネットで話題の現象を近畿大教授が解説、瓶の口に注目

渡辺 陽 渡辺 陽

「ジャムのフタ」がトレンドに入ってるのでこれ見て!!!!!アヲハタすごっ!!!!!」とTwitterに投稿したのはカツ沢カレー子さん(@ktzwcrrk)。動画には勝手にジャムの瓶のフタが閉まる様子が映っていました。このツイートには「生きているフタってこと?」といったコメントが寄せられました。

「何これすごい!久しぶりにアヲハタジャム買ってこようかな…」
「すごい!開ける時にこの逆の事があると助かるぅ~」
「この技術にはさすがの私もシロハタを上げざるを得ない」
「容器の製造メーカーが凄いのでは?」

ビックリというよりはなんか感動しました

投稿したカツ沢カレー子さんに話を聞きました。

ーー瓶にフタを載せたら、勝手に回転したのですか?

「右手にジャムをすくったスプーンを持っていて、フタは閉められないけど取りあえず瓶に被せて置いておこうと思ったんです。そして、フタを載せたら勝手に回転しました」

ーー最初に見たときはびっくりしたでしょうね?

「最初に載せた時はパンに意識が集中していたのでちゃんと見ていなかったのですが、なんとなく視界の端でフタが動いた気がして、いやいやまさか…と。改めてのせてみたらクルッと回ったので、ビックリというよりはなんか感動しました」

ーーしっかり閉まりましたか。

「いえ、あくまで簡易的な感じなので緩いです。食事中は簡単に開けられるしホコリとか入らないのでいいと思いますが、使用後はちゃんと人の手で閉めないとダメですね。閉まってると思って持ち上げたらひっくり返って大惨事、なんてことにならないように気を付けてください!」

ーーなぜ回るのでしょうね?

「なんで勝手に回るのか、それはアヲハタさんが精魂込めて作っておられるので魂が宿ってるからでしょうね。それしか考えられません!」

アヲハタに聞いた

勝手にフタが閉まるなんてことはないだろうとたかをくくっていましたが、確かに閉まりました。近くのスーパーでアヲハタのジャムを購入、編集部内でさっそく実験してみました。カツ沢カレー子さんと同じように瓶の上にフタを載せてみると「クルッ」と回転するではありませんか。しっかりは閉まっていませんが、回転するところを目のあたりにすると、やはり不思議な感じです。

これは製造会社に聞くしかないようです。1932年創業のアヲハタ株式会社(本社・広島県竹原市)にこの現象について、質問してみました。ところが…。「(SNSで)話題にしていただいたのですが、意図してのものではないので、コメントは控えたいと思います。ただ、最後まで美味しくいただいてもらうために、お客さまには手で完全にフタを閉めていただき、冷蔵庫に保管していただきたいと思っています」(アヲハタ広報)。最後は“手動”でフタを閉めないといけないことだけは分かりましたが、それ以上は分かりませんでした。

ナゾの解明へ向けて、近畿大学理工学部の近藤康教授に頼ってみました。すると、同教授は次のように解説してくれました。

◇ ◇

アヲハタのジャムのフタが勝手に回転することは不思議ではないと思います。瓶とフタを横から撮影した上記の動画を見てください。フタの高さが低くなっている(フタが落ちている)ことが分かります。フタが回転することばかりに気を取られていませんか?

瓶の口を見ると【写真1】、出っ張りが斜めにつけられています。この部分にフタの出っ張り【写真2】が載ります。すなわち、アヲハタのジャムのフタが回転する(落ちる)のは、斜面に置かれたモノが勝手に滑り落ちることがあるのと同じです。(下から撮影した動画が分かり易いでしょう)

他のメーカーのジャムの瓶のフタが回転しない(落ちない)のは、瓶の出っ張りの斜めの角度が小さいか(斜面が緩やかと同じ)、フタと瓶の間の摩擦がアヲハタのよりも大きいからだと考えられます。

さて、今まで考えてきたことが正しければ(原理が理解できているのならば)、勝手に回転する(一緒に落ちるけれど)ものを作ることができるはずです。上の動画を見てください。落ちながら1/4回転ぐらいしています。【写真3】と【写真4】を見てください。不思議な現象にも理由があるはずです。そのような理由を考えることが、学問(ここでは物理学)です、楽しいですよ。

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