発達障害の「グレーゾーン」…思うような支援を受けられない子どもたち 困難度がより高まる「高校進学」

島田 志麻 島田 志麻

発達障害が認知されるようになって数年、さまざまな障害のある子どもたちが支援を受けられる世の中へと変わってきています。しかし、発達障害のある子どもたちの中には、グレーゾーンと判断され思うような支援を受けられないというパターンも存在します。発達グレーゾーンの子どもたちとその親が抱える「高校進学問題」について取り上げてみました。

発達障害のグレーゾーンとは

発達障害は生まれつき脳の発達が定型発達の人と異なり、得意なことと不得意なことの振り幅が大きいという特徴があります。大きく分けて他者とのコミュニケーションが苦手な「自閉スペクトラム症」、不注意や忘れ物が多く、じっとしていることが苦手な「ADHD(注意欠陥多動性障害)」と、知的発達に問題がないが読み書き・計算など特定の事項が苦手な「LD(学習障害)」の3つに分類されます。この3つの障害が単体もしくは重複していることを発達障害といいます。

発達障害はWISCなどの知能テストを行い、その結果を元に医師の診断を受けます。知能テストは子どものIQ(知能指数)がどのくらいあるのかを調べるためのものです。WISCを受けるタイミングは就学前などが多く、幼児など小さな子どもの場合は「新版K式発達検査」などでDQ(発達指数)を調べることが多いです。

IQの平均値は100前後とされていて、IQ70以下と診断される場合、知的障害があると認定され療育手帳が交付されます。またこの数値が支援学級や支援学校などの進学・進級に深く関わっています。

発達障害のグレーゾーンはこのIQが71~84以下という知的障害と定型発達の境界の子どもたちを指す場合が多いのですが、IQが130以上など高すぎる場合も該当します。グレーゾーンの子どもたちは療育手帳や精神保健福祉手帳などの交付が受けられない場合が多く、生きづらさを感じているといいます。

グレーゾーンの子どもたちは…

発達障害で手帳を交付された子どもたちは本人の状態や親の希望も含めて、支援学校や支援学級に在籍します。高校進学も高等支援学校などに進学する場合がほとんどです。しかし、グレーゾーンの多くの子どもたちは、支援学級や支援学校に進級・進学することができません。そのため、多くの問題を抱えながら通常学級に在籍しています。通常学級では担任や補助教員のサポートの他に、週に何度か通級を利用するといった学習方法を行います。

義務教育期間は、このような方法でグレーゾーンの子どもたちをサポートしているのですが、問題は高校進学です。多くの子どもたちは知的障害がない、もしくは軽度とみなされ小中学校と同様、定型発達の人と同じように全日制などの高校を受験します。ですが、学力に問題のない発達障害のグレーゾーンの子どもたちは、自分の興味が向かないことに対してはおろそかになりやすい傾向にあり、在籍していれば卒業できる義務教育とは違う高校では、合格よりも「卒業」の方が重くのしかかってしまうのです。

グレーゾーンの子どもたちの進学に寄り添ってくれる高校は少ないというのが現状です。現在は全日制・定時制の他に「通信制」の高校が増えてきています。通信制の高校では発達障害に特化した学校もありますが、その数はまだまだ少ないです。しかし、グレーゾーンだからと諦めず高校卒業という学歴を取得することは、これから先の子どもたちのために必要なことです。子どもたちの興味関心があることが何かを見極め、来る高校受験まで親子でよく話し合うことが大切です。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース