「脱プラと食品ロスは相性が悪い」包装を一律にやめるとどうなる?ある青果店主の指摘

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 「脱プラと食品ロスは相性が悪い」-。1月、京都市の若手青果店主のつぶやきが反響を呼びました。ツイートにはしなびてしまった野菜の写真も添付されています。つぶやきは3500回以上リツイートされ、話題となりました。ツイートの意図を店主に聞きました。

 つぶやいたのは京都市下京区の西喜商店の近藤貴馬さん(37)。きっかけは今年1月上旬に手に入れた京都府内産の「おたふく春菊」にありました。春菊は年末に市場に出荷されたものの、在庫のまま越年したようです。食品ロスを少しでも減らそうと、近藤さんが約20kg引き取ったものの、傷んでいるものが多く、約3kgしか売ることができませんでした。

 春菊が個別包装されていなかったことが傷みの一つの要因だと、近藤さんは言います。春菊を含む葉物野菜はプラスチック製のフィルムで個別包装することで鮮度を長く維持することができるそうです。

 傷んでしまった春菊を見てつぶやいたのが話題となったツイートでした。「裸のまま出荷されてそのまま放置されると1週間持たず傷んで大量破棄」

 近藤さんは傷んでしまった春菊を見て「脱プラスチック」の潮流が脳裏をよぎったと言います。脱プラの流れがさらに青果業界にも及ぶと、これまで以上に食品ロスが増えるのではないか-。そんな懸念から冒頭のツイートをしたそうです。

 近藤さんによると、脱プラスチックに取り組みながら野菜を販売する店はすでに登場しているといいます。そうした店は頻繁に野菜の状態をチェックしたり、傷み始めた野菜は総菜に回したりするなどの工夫をしています。しかし、これらの取り組みは多くの既存青果店では難しいそうです。

 「確かに野菜の過剰包装は避けるべきだと思います。しかし、包装を一律にやめてしまうとなると、廃棄する野菜が増えてしまい逆に環境に負荷が掛かるのではないでしょうか。脱プラスチックを進めるにもバランスが大事だと伝えたいという思いからツイートしました」と近藤さんは話します。

 ツイートは大きな反響を呼びました。「こんなにリツイートされるとは思いませんでした。ツイートをきっかけに身近な視点から脱プラスチックの問題に関心を持ってもらい、冷静な視点で見つめてほしいです」

 一方で、現在でも費用や手間の面から消費地に比較的近い大都市近郊の農家の一部は個別包装せずに出荷しているといいます。近藤さんは「生産方法や流通の仕組み上、近くで生産された野菜が、遠くから運ばれてきた野菜より高いことがあります。そうした場合、少し高くても地元や近郊の野菜を選んでほしい。すると、個別包装しなくてもいい野菜が増えるのではないかと思います」と呼び掛けます。

 社会課題を解決する糸口は生活の中にもあるようです。

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