ニヨ活ってなんだ?「認知症で人生をあきらめる人をゼロに」 認知症患者は2025年には推定700万人

山本 智行 山本 智行

 地域コミュニティーの力で認知症を予防する活動、その名も「ニヨ活」が認知されつつある。運営するのは一般社団法人「認知症予防活動コンソーシアム」(大阪市)。2018年にスタートし、ニヨ活フェスなどの開催を通じ、個人と企業、団体、自治体をつなぐプラットホームの役割を果たしてきた。日本人が最も罹りたくない病気のひとつに挙げられ、人ごとではない疾病にどう向き合えばいいのか。代表理事の歌丸和美さんに聞いた。

 「認知症」という言葉を見たり、聞いたりしない日がないほど、ふだんの生活の中に深く浸透している。年々、罹患率も高まっており、歌丸さんによると認知症患者は2025年には推定700万人。その予備軍とも言える軽度認知障害(MCI)を加えると1300万人とのことだ。

 「700万人と言うと、日本全国の小学1年生から6年生までを足した数と同じ。いかに深刻かがお分かりになると思います。しかも、今の医療現場では特効薬も治療法も確立されていません」

 2025年と言えば、大阪・関西万博が開催される年。もう目の前ではないか。その数字の大きさにドキッとさせられたが、歌丸さんはさらに警鐘を鳴らす。

 「日本人の介護期間は平均9年と言われていますが、特に認知症の場合は、その人のみならず家族の人生までも巻き込んでしまいがちです。これと言った治療法もないため、家族は絶望し、認知症であることを隠そうとしたり、1人で抱え込んだりすることが多い。それもまた問題です」

 ニヨ活は、そんな閉ざされた状況を改善しようとするところから始まった。「認知症で人生をあきらめる人をゼロにしたいという思い。そのためには予防と共生が大切」。立ち上げは2018年。歌丸さんによれば、実はこの年、世界の名だたる製薬会社が認知症治療薬の開発から手を引いた年でもあったと言う。

 「日本人は欧米に比べ、まだ予防の意識が低く、病気になったら病院に行って薬をもらって治せばいいという考えですが、薬を飲めばいいというものではないでしょう。それと1人でやるのではなく、みんなで力を合わせ、地域で支え合えば、たとえ認知症の方が増えたとしても生きやすい社会になると信じています」

 その輪を広げるために定期的に開催してきたのがニヨ活フェスだ。昨年秋には、福祉業界のゲストを多数招き、あべのハルカスなどで3日間にわたって開催。動画コンテストの「N−1グランプリ」といったユニークで親しみやすい企画も実施し、啓蒙に力を入れている。

 代表の歌丸さんは、もとは製造業のOL。その後、結婚、出産を経て主婦に。しかし、出産後のストレスで体と心を壊し、拒食症と鬱状態になったことから本物の知識を身につけようと猛勉強。健康管理士や野菜ソムリエ、薬膳マイスターなどの資格を取得した。さらに、日本成人病予防協会の専任講師としても活躍中だ。

 「喫煙や糖尿病など生活習慣を変え、いい睡眠をとることが大切。コロナ禍でのコミュニケーション不足や精神的なストレスも心配です」

 ニヨ活としては、今後も脳トレアプリやアロマハンドマッサージ、体操、スポーツ、音楽など五感を刺激する自然療法を使って認知症予防につなげていく考え。歌丸さんは「その中から認知症サポーターであるオレンジサポーターを増やしていければ、いいですね」と意気込んでいた。

◇一般社団法人「認知症予防活動コンソーシアム」
〒543-0021 大阪市天王寺区東高津町5-17 新聞印刷本社ビル4階
電話06(4303)4434
営業時間=10:00~17:00、土日祝は定休日

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