青いじゅうたんと呼ばれるネモフィラ畑が全国的に人気です。国内の名所は20カ所以上にのぼり、4月から5月にかけさまざまなイベントが開催されます。そんな中、ネット上にこんな声がありました。「ネモフィラとオオイヌノフグリって似てる」
オオイヌノフグリは道端などでよく見る小さな青い花。たしかに一見すると花の色や形が似ており、特に拡大写真を並べるとそっくりです。しかし、和名「瑠璃唐草(るりからくさ)」が同じという共通点はあるものの、2つは全く別の植物。植物園の係員に見分けるコツを聞きました。
わかりやすい見分け方があった!
ネモフィラ(学名Nemophila)は、ムラサキ科ネモフィラ属の越年草で原産地は北アメリカ。花のサイズは約2〜3cm(長居植物園「植物図鑑」より)。日本には1877年に渡来したと言われています。
一方、オオイヌノフグリ(学名Veronica persica)は、 オオバコ科(ゴマノハグサ科から移動)の二年草。花のサイズは1cm弱。国立環境研究所「侵入生物データベース」によると、ヨーロッパに自然分布する植物ですが、日本では1887年に東京で確認され、大正時代初期に全国へ拡大しました。
SNS上で2つの植物名を検索すると、「ネモフィラを初めて見た時、大きいオオイヌノフグリだと思った」「同じ花だと思ってました」「似てるよね?」「違いがわからない」などの声が数多く投稿されています。
約2万5000株のネモフィラを育てる「大阪市立長居植物園」。植栽管理を担当する係員も「似てるねという声は聞いたことがあります」。観察時のポイントを尋ねると、2つの注目点を教えてくれました。
一番わかりやすいのは花びらの数の違いです。「花びらはネモフィラが5枚。オオイヌノフグリは4枚です」(長居植物園係員)
また、おしべの数にも違いがあり、「ネモフィラのおしべは5本、オオイヌノフグリのおしべは2本です」。
学術的にはほかにも細かな違いはありますが、植物観察の第一歩として、この2点に注目してみてはいかがでしょうか。
同園では5月6日までネモフィラフェアを開催中。9:30~17:00(入園は16:30まで)。大阪府大阪市東住吉区長居公園1-23。
世界から注目ネモフィラブーム、いつ始まった?
ネモフィラ畑と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「国営ひたち海浜公園」(茨城県)です。約4.2ヘクタールに約530万本が咲き誇り、SNS上では「ネモフィラの青が空までつながっている」「ネモフィラの海が美しすぎる」などと人気のスポットです。
1991年開園。同園担当者によると、ネモフィラの栽培は2002年から。公共の建設工事で発生した土を積み上げて造成した約1.5ヘクタールの土地に約200万本を植えたのが始まりでした。
人気を集め始めたのは2013年ごろからだそうで、「SNSの普及や絶景ブームによりネモフィラの認知度が上がったと考えております」(ひたち海浜公園担当者)。
2015年にはCNNが発表した「日本の美しい風景31選」に姫路城(兵庫県)や嵯峨野(京都府)などとともに選ばれ、ネモフィラ目当ての来園者は海外からも訪れるように。特にアジアからの団体客が目立つといいます。
入場者数は毎年、ほぼ右肩上がりで増加。2019年のネモフィラ期間中には、1日で92721人を記録したことも(4月28日)。今年4月21日には、開園以来の入場者が4000万人を突破しました。
担当者は同園のネモフィラについて、「一輪でも可憐な花姿です」と愛らしさをアピールした上で、「当公園のネモフィラは、みはらしの丘という場所に植栽しています。見頃を迎えると、丘一面は青色で染まり、その光景はまるで空や海に溶け込むように見えます。青の世界に没入できることが、当園のネモフィラの魅力かと思われます」と話しました。
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ハンモックやベンチでネモフィラ畑を演出する施設も。
神戸布引ハーブ園(兵庫県神戸市中央区北野町1-4-3)は2016年からネモフィラ畑をスタート。ネモフィラの周辺には、ハンモックやベンチ、遊歩道などを配置。今年は約4200株が見頃を迎えており、5月下旬ごろまで楽しめるそうです。
「一面に広がる『ブルーのじゅうたん』を前に、ハンモックに揺られたり、ベンチでのんびりと過ごしたり。リゾート気分をお楽しみいただけることから、日本国内だけではなく、海外のお客さまからも人気です。ロケーション抜群のネモフィラ畑でたくさんのきれいなお写真を撮って、優雅な休日をお過ごしください」(神戸布引ハーブ園担当者)
なお、開花状況などは天候などにより変化するため、お出かけ前には各施設のホームページなどで最新情報の確認を。