くも膜下出血につながる恐れも 「未破裂脳動脈瘤」を医師が解説 早期発見のために「脳ドック受けて」

ドクター備忘録

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 脳ドックなどの検査で偶然見つかることもあるという「未破裂脳動脈瘤」。いったいのどのような病気なのでしょうか? その症状や治療方法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――未破裂脳動脈瘤とはどのような病気なのでしょうか?

脳の動脈のとある部分、特に分岐点に多く見られるのですが、血管がコブのように膨らんだ状態を脳動脈瘤と呼びます。未破裂脳動脈瘤は、コブが破裂しないままの状態です。一方、コブが風船のように膨らみ破けてしまうと、脳を包んでいる「くも膜」という膜の内側に出血を起こします。これが「くも膜下出血」で、非常に死亡率が高い病気です。

――破裂する可能性のある脳動脈瘤ということですね。どのように発見されるのですか?

MRI検査や造影剤を使用したCT検査で発見できます。いわゆる「脳ドック」を受けていただければ、ある程度大きいものは見つけられます。

――未破裂脳動脈瘤がある場合、自覚症状はあるのでしょうか?

ほとんどありません。ただ、未破裂脳動脈瘤が大きくなると周囲の神経を圧迫し、自覚症状が出る場合も。例えば目の裏側にある神経に触れている場合、まぶたが落ちてきたり、物が二重に見えてきたりといった症状を訴える人もいます。

――まぶたが落ちたり、物が二重に見えたりというと、目の病気と勘違いしてしまう人もいるかもしれませんね。

はい。実際に、眼科を受診した際に脳神経科を案内されるケースも多いのです。

――未破裂脳動脈瘤は、大きくなると治療が難しいのですか?

そうですね。もちろん大きくなるほど破裂するリスクが高くなりますし、手術も難しくなります。また、治療の際に合併症が起こりやすくなることも考えられます。

――では、破裂する前にできる治療はありますか?

薬物治療はできないので、手術を行います。開頭手術でクリッピングと呼ばれる破裂を防止する方法や、脳動脈瘤の血管にカテーテルを入れ、コイル(プラチナ製の糸)を詰めることで瘤内への血流を遮断する血管内手術があります。

――自覚症状があまりないとなると、予防するのも難しいですよね。

はい。まずは脳ドックを1・2年に1回受けていただきたいですね。そうすれば脳動脈瘤の有無は分かりますので。ただ、未破裂脳動脈瘤が見つかったとしても、すべてがくも膜下出血に繋がるわけではないので、治療をするかどうかも迷う人が多いです。慎重に経過を見つつ、医師とよく相談してほしいと思います。

――脳動脈瘤が見つかってから、大きくならないようにすることはできますか?

小さい段階で判明した場合、破裂しやすくなる要因というのは分かっています。高血圧、たばこを吸う、そしてお酒をたくさん飲むことの3つです。

――なるほど。そうなると、男性の方がリスクは高いのでしょうか?

実は脳動脈瘤自体は女性に多いものなので、一概にどちらにリスクがあるとは言えません。生活習慣を見直すとともに、定期的に健康診断を受けることをおすすめします。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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