欠損歯をカバーする人工歯「インプラント」って何? 歯科医が費用面、安全面などをお答えします

ドクター備忘録

木村 正信 木村 正信

 歯を失う2大原因は「むし歯」と「歯周病」です。そして、欠損歯になった際の治療方法は「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3種類。なかでもインプラント治療は自由診療で外科出術を伴うので「高い」「危険」というイメージがあったりします。そこで、今回は歯を根元から作り直すインプラント治療について話をしましょう。

チタン製インプラントが誕生して60年

 現在のようなインプラント治療の原型は1950年代初頭、スウェーデンの医学者、ブローネマルク博士がチタンと骨の結合を発見したことにあると言われています。それまでは鉄や金、アルミニウムなど様々な素材が使用されていましたが、それらは長期的に安定するものではなかったようです。チタン製インプラントによる治療法を確立したことで、骨と結合し、長期安定を実現する現在のインプラント治療の基礎を築いたのです。

自分の歯のような違和感のない見た目と噛み心地

 インプラント治療は、あごの骨に人工の歯の根を埋め込み、根元から安定した歯を作るので、自分の歯のように違和感のない見た目と噛み心地を取り戻すことができるのが魅力です。

 インプラントとは「人工の歯の根」のこと。フィクスチャーとも呼ばれ、現在、使われている大半がチタン製でネジのような形をしています。インプラント治療では、このインプラントと人工の歯(クラウン)、そして、インプラントと人工の歯を連結させるアバットメントという主に3つの部品を使っています。あごの骨にインプラントを埋め込み、その上にアバットメントを取り付けてから、最後に人工の歯を設置して完成します。

インプラントのメリット、デメリット

 インプラント治療で多い質問は以下の通りです。

Q インプラント治療のメリットは?

「見た目が自分の歯と変わらず美しい口元に。また噛み心地も本当の歯のようです」

Q 他の治療(入れ歯やブリッジ)に比べてなぜ、高いんですか?

「基本的には保険適用外となるため、全額自己負担になり、高額な費用となります。ただし、事故や病気、生まれつきの形成不全など、特定の条件下では保険が適用されるケースもありますので、歯科医に相談してください」

Q 料金設定はどうなっているのですか?

「相場は30万から40万円でしょうか。一見安そうに表示しているところもあります。一般的にインプラント治療とはチタン製の金属を埋め込む手術のことを指し、人工歯(被せ物)や骨を作る手術などは別途費用を請求されるケースもありますので、ご注意ください。医院によっては分かりやすくするため、各種費用をプランに含めた価格で表示しています」

Q インプラント治療は安全ですか?

「外科手術ですので体への危険を懸念する声はあります。しっかりとした信頼のできる歯科医院選びをしてほしいと思います。きちんとした治療をすれば、欠損歯の治療法の中では、他の健康な歯に影響を与えない、身体に優しい治療法でもありますが、入れ歯やブリッジと比べ、治療期間が長くなることも考慮した方がいいでしょう」

Q インプラントの1ピース、2ピースタイプって何?

「1ピースタイプは構造が単純なため、材料代のコストを抑えることができるので、格安インプラントを提供する医院はこちらを使用していることが多いようです。2ピースタイプと比べると、骨の少ない部位には使用しにくく、審美的にも劣り、前歯においては出っ歯になりやすいなどがあげられています。当院ではより安全で高品質なインプラント治療を提供することを目指し、すべてのインプラントにおいて2ピースタイプを採用しています」

 2ピースタイプの術式には1回法と2回法があります。1回法の方が2次オペの必要がなく身体的負担が少ないのですが、骨造成手術などを行う際には感染リスクを考え、2回法を採用しています。2ピースタイプを使うことで、骨の状態に応じて臨機応変な術式が取れるのも利点です。

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 インプラント治療を行ったら毎日のセルフケアも必要です。定期的にメンテナンスしてもらうことも大切なので、気になることがあれば、専門医に相談してみてください。当たり前ですが、歯がない状態は体に良くありません。

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