犬や猫などペットは依然として日本でも人気がある。近年はひとり暮らしの人の間でもペットを飼う人が増え、ペットがなくなってペットロスになる人もいるし、人間並みの待遇をペットに与える人もいる。そうなってペットが愛され大事にされることは大いに歓迎される一方、飼えなくなったからといってペットを放棄することも今日では大きな社会問題になっている。猫や犬ももちろん問題だが、最近では横浜で飼われていたニシキヘビが逃げ、専門家が数日に渡る捜索ののちに捕獲したり、アリゲーターガーやカミツキガメが川に放棄されるケースも多い。東京ではそのような現状から、多摩川がタマゾン川と揶揄されることもしばしばある。
日本にも動物愛護法などがあり、我々はベットの権利が保障されていると思いがちだが、先進国の中では日本は遅れているのが現状のようだ。以下それについて簡単に紹介したい。
まず、英国は動物愛護の先進国として、それに関する多くの法律を定めている。たとえば、飼い主が遵守しなければならないこととして、ペットの遺棄禁止、しつけ以外の過剰な苦痛を与えることの禁止、生後8週未満の猫や犬の購入禁止などがあり、販売する方もペットショップでの猫や犬の販売禁止などが定められている。日本では法的に禁止されていないようなことまで明記されており、英国の動物の権利を重視する文化が想像できる。筆者も昔英国に住んでいたが、近所で散歩する飼い主や猫や犬などはいつも笑顔で幸せそうだったのをよく覚えている。英国人の動物愛護に対する思いは平均的に日本より高いような気がする。
また、オーストリアでも動物の権利を守る法律が存在し、英国同様にペットショップでの猫や犬の販売が禁止されるだけでなく、同国には動物を殺処分する施設がそもそも存在しない。日本では毎年殺処分される犬や猫などは数が絶えないが、オーストリアでは家族を失ったペットなどは専用施設に収容されることになっている。
一方、デンマークではそもそも犬を外で飼うことが禁止され、仕方なく外で飼う場合には強い日差しや悪天候を避けるために小屋を設置することが義務付けられている。ニュージーランドではペットの糞などを飼い主が処理することが義務となり、迷子になっても居場所が分かるようペットにはマイクロチップを装着しなければならない。スウェーデンでは、犬や猫はケージの中で飼うこと、犬は6時間に一回は散歩させることが義務付けられ、賃貸物件に住む際にペット飼育を申請する必要がなく、電車やバスなどの公共交通機関もリードのみでペットと一緒に乗車することが可能だ。
最後に、スイスは世界で最も厳しい動物愛護法を定めていると言われる。スイスではマイクロチップの装着だけでなく、犬を販売する際は販売者の名前や住所、犬の血統などを詳しく明記することが義務付けられ、ウサギやモルモットなど小動物を飼う際は2匹以上で飼わなければならない。また、猫を飼う際は飼い主などが毎日一定時間を確保して接してあげる必要があるという。
これら欧州各国での法的な義務や規制が、ペットを飼う各家庭でどれほど具体的に守られているかは分からない。しかし、日本でも無意識のうちにしなければならないと思うことの多くが法的に義務付けられている。日本でも今年6月から、改正動物愛護法により、販売者がペットにマイクロチップを装着したり、飼い主情報を登録することが義務付けられる。当然ながら、どこの国でも良い飼い主もいれば責任感を欠く飼い主もいる。しかし、我々は海外の事情をもっと知って動物愛護に関する意識を高めていく必要があろう。