猫エイズで里親が見つからず、仲間からいじめられていた保護猫 ペットロスの男性の家族となり互いを癒し合う日々

中河 桃子 中河 桃子

「保護猫は心を閉ざしていて当たり前。温かく接してあげるうちに、少しずつ打ち解けていく様子がたまらなく愛おしいんです」と話すのは、滋賀県南東部で保護猫活動に携わっている西村順二さん。

人間の年齢に換算するとアラフォーのふくまるくんとは、2019年6月に、保護猫ボランティアさんの家で出会ったそう。猫エイズに感染しているために里親が決まりにくく、他のネコにいじめられていたキジトラを、西村さんは自宅に迎え入れました。そんな出会いがまるでコミックの『おじさまと猫』の主人公のようだとのことで、主人公の猫にちなんで名付けたそうです。

凜々しい顔立ちのふくまるくんは、物静かでクール。甘えたりだっこしたりはあまり好きではありませんが、西村さんの布団にそっと潜り込んでくる、不器用な可愛らしい一面も。

保護猫に関心をもったきっかけは?

西村さんが保護猫に関心を持ち始めたのは「地域猫」を知った2018年のこと。お隣さんが保護猫のボランティアを主宰していることから地域猫「トラ」と出会い、人なつっこい性格に夢中に。屋外でかわいがっているうち、トラくんが我が物顔で西村さんの自宅を出入りするようになったそう。

ネコの飼育は未経験だったものの、お隣さんから「飼ってもええよ」と背中を押してもらい、同年5月から一緒に暮らすことになりました。しかし2019年5月、家ネコになった時から高齢だったトラくんは、老衰のため虹の橋を渡りました。

ともに過ごした時はわずか1年。あまりにも短い時間でしたが、トラくんを失った悲しみから西村さんはペットロスになってしまいます。「トラが僕を癒してくれました。この喪失感を埋めてくれるのは、やはりネコしかいない」とふくまるくんをお迎えすることになったというわけです。

「本当だったら飼えなかった」

しかし「本当は僕の家では飼えないんです」と言います。その理由は「1人暮らし」だから。

誰にでも猫を譲渡されるわけではなく、保護猫が幸せな時間を過ごせる家庭とみなされた場合のみ里親になれます。例えば、後見人のいない年配者や、未成年、同棲中のカップルなどは、保護団体からネコの世話が難しいと判断される場合があります。里親の条件をクリアできていても、引き渡しの前には猫との相性をみるためのお試し期間を設けるほか、ボランティアスタッフが実際に飼育できる環境かを確認するために、里親宅へ訪問するケースも。

西村さんの場合は、隣に保護猫のボランティアスタッフが住んでいること、トラブルがあってもすぐに相談できる環境にあること、何よりお隣さんから飼育の太鼓判を押してもらえたことで里親になれたそうです。

「譲渡を無料のペットショップと勘違いしている人や、飼える環境ではないのに『飼ってあげる』と上から目線で言ってくる人もいます。猫ちゃんやワンちゃんの一生を、きちんとお世話できる家族に託すことが譲渡だと理解してもらえるよう、積極的に啓発活動もしていかなければ」と語ります。

西村さん自身もボランティア活動に関わっていなかった頃は、犬、猫の保護の重要性をよくわかっていなかったそう。しかしトラくんと過ごすようになり、お隣さんから捨て猫・捨て犬の現状、多頭飼いや飼育崩壊の実情を知り、愕然としたと話します。

現在は「内情を知ったからには、僕にできることがあるなら手伝いたい」との思いで、定期的に行われている譲渡会に参加しているのだそう。

今は西村さんの愛情を一身に受けるふくまるくん。そんな彼を見つめながら「今度こそ幸せになってほしい」と語る西村さんの思いは、彼だけの運命のみならず、全ての保護猫・保護犬への願いに他なりません。

動物保護ボランティア団体「ぼくらはみんな生きている」いぬねこ譲渡会
期間:毎月(不定期)
場所:アル・プラザ野洲(駐車場)、甲賀市まちづくり活動センター「まるーむ」
https://www.facebook.com/ぼくらはみんないきている-2422246634663859

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