兵庫県尼崎市に暮らす母と息子を描いた小説「尼崎ストロベリー」が、尼崎市民を中心に話題を集めています。同市出身の作家・成海隼人さんが19年に幻冬舎からリリースしました。
同作は、主人公の高校生・駿一とがんと闘った母(オカン)を描くお笑い好き親子の感動ストーリー。貧しくても幸せな生活を送る中、オカンの胃がんが発覚し、余命半年と宣告されてしまいます。笑うことでがん細胞を攻撃する「ナチュラルキラー細胞」を活性化できると知った駿一は、オカンを救うため、親友とコンビで漫才大会に出場します。成海さん自身と母親をモデルに実体験を交えながら書かれ、阪神尼崎駅前の噴水広場や尼崎中央商店街など、尼崎の名スポットも登場します。
作品は第3刷重版決定、さらに市内の図書館で貸し出しの予約待ちなど、尼崎市民を中心にファンが広がっています。
そんな中、昨年11月に市内で行われたトークショーで、成海さんが「舞台をします!」と宣言し、舞台化が決定。実行委員も集まり、上演に向けて活動中です。
成海さんにお話を伺いました。
――出版から2年が経過しました。
「出したときに予想以上に反響があったんですよ。記念出版で終わるかなみたいな気持ちやったから、これ売れるんちゃう?映画とかしたいなとか、ちょっと調子に乗り出して(笑)コロナ禍になったけど、その中でたくさんの出会いがありました。実行委員会、尼崎の本屋さん、尼崎市の行政の人とかいろんな人との出会いがあって、いろいろ考えた結果『この人らと一緒に何かしたいな』って気持ちが強くなった。それで『舞台や』って思って、尼崎の地で尼崎のみなさんと舞台にしたいという気持ちで動き始めた形です」
――舞台をどのようにしていきたいですか?
「尼崎の中でもっと広めたいという気持ちがすごいあります。理想は『武庫川越えたら誰も知らん、でも尼崎の人は一家に1冊ある』。ここが最高のゴール。舞台にできたら、主人公は駿ちゃんって呼ばれてるキャラクターなんですけど、1回だけで終わることなく、2回、3回と毎年やっていくような舞台にしたい。2代目駿ちゃん、3代目駿ちゃんのように。(ミュージカル)『アニー』って、何代目アニーってあるじゃないですか。あの感じでできたらな。10代目、15代目とかになってきたらおもろなりますやん。『俺は3代目の駿ちゃんがよかった』『いやいや、10代目やろ』みたいな、そんな家族の会話があったら最高。また、今の尼崎の中学生の子とかが『この舞台見た』『文化祭でやったことある』になれば、その子らがまた東京とかに行って『尼出身なんや。尼崎ストロベリー知ってる?』『あ~あの舞台な』ってなるのが夢。『あれやらされたよな~』みたいな」
――現在、上演に向けてどんな活動をしていますか?
「尼崎の行政さんもいろいろ協力してくれて、この前、尼崎市文化振興財団の理事長でアルカイックホールの理事長の仲野好重さんという方がいらっしゃって、対談させていただきまして、その対談番組がエフエムあまがさきで2月と3月に放送されます(2月26日前編、3月5日後編、午後1時30分から)。その対談記事が3月のアルカイックホールの冊子に出ます。理事長にもとてもおもしろかったと盛り上がっていただいたので、なんとかアルカイックホールで舞台にしたいなという思いで動いています」
――舞台の中でこだわりたい点は?
「ずばり、漫才。漫才の本やし、僕はお笑い好きやし、漫才の台本を小説に入れようってところから始まりまして、そこはやっぱりこだわってて、他の小説にはないところやと思う。よくアーティストとかで『自分の好きな人を歌にしました』みたいなのありますやん。僕の中であの感じ。『大好きなオカンとの思い出を漫才に閉じ込めました』みたいな感じ。だから漫才のところは舞台の中で最大のキーポイントになるんで、役者の方にはバリバリ稽古してもらおうと思います。そのままM-1に出られるくらい(笑)」
3人の実行委員の方々も「尼崎ストロベリーが何年も何年も、古典落語みたいになっていけば、僕バージョンの尼崎ストロベリーみたいなものもできたらいいな」「本当に心から感動した原作が形になっていくのをリアルタイムで追っていきたい」「『私この作品に関わってたんやで』って自慢できるように、もっと盛り上げてドヤれたらいいな」と意気込んでいます。