兵庫・尼崎の警察署にそびえる赤くて丸い謎の建物…誰がいつ、何のために?来年には姿を消す可能性も

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 兵庫県警の旧尼崎西警察署の建物前に、まるでSFの世界からやってきたような不思議なカプセルがあります。赤くて丸くて、真ん中辺りにぐるっと一周する黒い窓。一体これは何なんでしょうか。

赤くて丸い謎の建物。昔からあるけれど?

 兵庫県尼崎市の尼崎西警察署は、2006年に尼崎中央警察署と統合して尼崎南警察署になりました。その際、尼崎中央警察署が本庁舎になったのですが、2019年から建て替え工事に入ったので、現在は旧尼崎西警察署の建物が仮庁舎になっています。その仮庁舎の敷地内、国道2号と道意線の交差点に面した角に、まるで宇宙船のような赤くて丸い建物があるのです。

 筆者がまだ子供の頃に出来たような記憶がありましたが、その場所柄もあって、多分あれは交通整理とか取締をする施設なのかな、くらいに思っていました。しかし、もし仮にあそこで違反を見つけても降りてきて捕まえられないなあとか、あのカプセルって夏場は蒸し風呂になるんではないかなあとか、だいたいあそこにおまわりさんが入ってるの見たことないなあとか、ちょっと不思議なものとも感じていました。

 最近、自動車で通りかかると、窓に何か飾り付けのようなものが見えました。それでますます興味が湧いたので、直接警察署の窓口に伺ってみました。

聞いてみたら、それは「塔」の一部だった

 警察署の入り口を入ってすぐのところの案内の方に、「つかぬ事をお伺いしますが、あの表の赤いカプセルみたいなものについて教えていただきたいのですが」とストレートに訊ねてみました。すると、奥からにこやかな雰囲気の女性の方が出てきて対応してくださいました。尼崎南交通安全協会の事務局長・稲田さん。数枚の新聞のコピーをいただき、お話を伺うことが出来ました。

「あれは交通安全祈念塔といって、1974年に当協会の設立20周年を記念して建てられたんです」

「えっ、あれは塔なんですか?」

 横に建てられたスローガンの書かれた塔と、足元の石碑と、カプセル。三つでセットになっていて、あのカプセルも塔の一部の扱いなのだそうです。1974年というと50年近く前。目の前の国道2号にはまだ路面電車が走っていた頃です。

「あの丸い形は、事故ゼロの0という意味が込められてるんです。よかったら中、ご覧になりますか?」

 思いがけず、中を見学することが出来ました。

いまも使われているそうですが、来年には姿を消すかも

 カプセルの裏側に、1メートル半ほどの短いはしごがあって、登るとごく狭い踊り場、そしてドアがあります。中ももちろん円形で、窓の辺りで差し渡し2メートルくらい。パイプ椅子が二つ並んでいて、窓際がぐるっと奥行き20センチくらいのテーブル状になっています。ワゴン車の室内よりも狭いくらいの空間です。訪れたのは真夏の太陽が照りつける午後1時、室内はまさに蒸し風呂状態でしたが、狭い空間なのでエアコンを入れるとすぐに快適な気温になりました。

 一角には、マイクと放送施設があります。

「交通安全の啓発とか広報を、ここから放送することが出来るようになってるんです。警察署のものではなくて、交通安全協会の施設です。警察官がここに入って、交通整理とか取締をするものではないです」

 いまも春と秋の交通安全週間などには、ここからテープを流すことがあるのだそうです。また、全国の交通安全協会でも、このようなものを持っているところはたぶん他にはないだろう、ということです。

 大阪万博の時代の空気がまだ残っていた時代、スペースエイジ等と呼ばれたデザインの流れを感じる、まさにレトロフューチャーを地で行くようなデザインですね。

 現在建て替え中の尼崎南警察署が来年には完成して、仮庁舎のここは移転、この祈念塔もおそらく取り壊されるそうです。尼崎に残された昭和の名残。見られる時間はもう、そんなに長くないかも知れません。

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