市場で暮らしていた野良の母猫と子猫
サスケくん(9歳半・オス)は、母猫や兄弟姉妹と一緒に東京・京王線下高井戸駅前の市場で暮らしていた。子猫は全部で5匹いた。個人ボランティアが保護して、子猫たちは2人のボランティアの自宅で育てられた。その後、ボランティアは里親の橋渡しをしている明大前動物愛護病院で里親を募集した。
オス猫をもらおう
都内に住むNさんは実家で20年間猫と暮らしてきて、猫はもちろん、動物全般が大好きだった。ずっと猫と暮らしたいと考えていて、夫にも保護猫が紹介されるテレビ番組を見せ続けていた。新居に引っ越す時にペット飼育可の物件に引っ越したのを機に本格的に猫を探し始めた。
保護猫を引き取りたいと思い、いろいろ探していたところ、近くの明大前動物愛護病院で仲介をしてくれることを知ったという。「もともとは別の猫で申込みをしていましたが、その猫さんは預かりボランティアさん宅で長く過ごしていて、そのおうちの先住猫と仲良くなったので譲渡対象ではなくなったんです。そうして、サスケを含む子猫たちをご紹介いただきました」。2012年9月22日、Nさんはボランティアさんの家で、5匹の兄弟のうち女の子2匹と男の子1匹と面会した。子猫なので2匹一緒に飼うことを勧められたが、夫は猫を飼うのが初めてだったので、心配して1匹だけ引き取ることにした。
「譲渡サイトに、『オス猫は家の中を汚すと思われるので引き取られにくい』とい書かれていたのを見たことがあったので、サスケを譲渡してもらうことにしたんです」
天真爛漫な子猫
1週間後の9月29日に夫がサスケくんを迎えに行った。土曜日だったが、Nさんは午前中仕事だったため行けなかった。「夫にとっては初めての猫だったので、来る前からおもちゃを買ってくるなど、とても楽しみにしていました」。サスケくんは、まだ生後約2か月半だったこともあり、家に来るとすぐにおもちゃで遊んだりソファで転がったり、夫妻の腕の中に入って来たりして、まったく物怖じしなかった。
獣医師から下痢をしていて、寄生虫がいるかもしれないと聞いていたが、お腹にコクシジウムという寄生虫がいたので治療してもらった。家に来た当時は痩せた子猫という印象だったが、治療したら下痢が治まり、順調に成長した。「我が家に来た当初は2キロ弱でしたが、一週間で200グラムずつ増えていったことを覚えています」。サスケという名前は、夫が命名した。ボランティアさん宅でサスケくんに会った時、子猿のようにぴょんぴょん元気に跳びはねていたので、その様子から「猿飛佐助」を連想し、「サスケ」になったという。
かけがえのない存在
サスケくんはとても甘えん坊。夫妻が出かける時や帰宅時にはドアの前で大きな声で鳴いている。夫妻の手や顔を一生懸命舐めてくれて、膝に乗ったり抱っこされたりするのも大好き。自分から抱っこをせがんで、肩に手をかけてくる。
夫妻は、何かを話しながら「~だよね、サスケちゃん」と、気づけばサスケを会話に巻き込むようになった。以前は夫婦2人で外食することが多かったが、サスケくんが来てからは出かけていても気になって、「用事が済んだら早く帰ろう」、「ごはんは家で食べよう」と思い、あまり外食をしなくなった。
「休日にサスケがくっついて寝てしまうと、出かけたくなくなるんです。結局一日中自宅で過ごすということもよくあります」
初めて猫と暮らした夫は、「こんなに懐くとは思わなかった」と、あっという間に溺愛するようになった。夫は、「初めは野良猫ちゃんを助けたつもりでいたけれど、サスケには自分が助けてもらっている」と言っている。
「仕事で大変な日々でも、サスケに会えれば疲れが吹き飛びますし、サスケのために仕事も頑張りたくなります。地震など災害が起きた時、この子たちをどうやって守れるかということばかり考えてしまいます。本当にかけがえのない存在です」