2021年12月22日。Ponoco33さん宅で大切な命がひとつ、天国へ旅立っていきました。長きに渡り、飼い主さんと二人三脚な日々を過ごしてきた、愛猫なーさん。彼女が歩んだ21年間は愛で埋め尽くされていました。
公園で出会った1匹の猫が人生を変えた
出会いは、2000年。飼い主さんは、公園の野外ステージで1匹の子猫を発見。家族にしようと思い、自宅へ迎えました。
特徴的な鳴き声から、名前は「なー」に。お姫様のように上品な佇まいをしていたことから、飼い主さんは自然と「様」付けで呼ぶようになりました。
「何度も引っ越しをしたのですが、その度に新しい環境にすぐ順応し、寄り添ってくれた。なんで、こんないい子が私のところにきてくれたのだろうと常々思っていました」
そんななー様は「大物っぷり」を見せつけ、飼い主さんを驚かせたことも。それは実家でプードルと対面させた時のこと。「プードルが吠えて追いかけまわしても、なー様は全く相手にせず、涼しい顔をして高所で見下ろしていました。肝が据わっていてすごい、この子はなんだか特別な感じがするなと思いました」
ご長寿にゃんことして表彰
なー様の体に変化が見られ始めたのは、16歳になった頃のこと。高い場所へ登ったり、激しく遊んだりしなくなり、窓際で庭を眺めながら眠ることが多くなっていきました。
「歳を重ねても、なー様はあどけないままで。庭でつんできたお花がよく似合いました」
ご長寿にゃんことなったなー様は、公益財団法人 日本動物愛護協会から長寿表彰状をもらったことも。
この時、飼い主さんは赤いちゃんちゃんこと帽子を編み、なー様をほめたたえました。
「ペットと共にお参りをすると人間に生まれ変わって、来世で家族として会えると言われている善光寺へ一緒に参拝できたことも大切な思い出です」
肥大型心筋症を発症して闘病生活がスタート
しかし、2021年7月、健康優良児だったなー様は肥大型心筋症を発症。
心筋症の症状のひとつである、胸水による呼吸困難を改善するため、利尿剤を長期服用し、年齢を踏まえると健康だと言われていた腎臓の状態も悪化。また同時期、脳に疾患が現れ、視力もほぼ喪失してしまいます。飼い主さんは大きなショックを受けました。
しかし、次第に、残された貴重な時間を大切に過ごそうと考えるように。これまでたくさんの幸せと癒しをもたらしてくれた愛猫に恩返しをしようと思い、共に病気と闘う覚悟を固めました。
愛猫を優先し、無償の愛を与えた日々
病気発覚後、飼い主さんは心臓専門医にも状態を診てもらい、結果をかかりつけ医に持ち帰って、より適切な治療を受けられるよう、奮闘。
自宅では毎日、呼吸数を注意深く観察し、呼吸困難に陥った時にはすぐ病院へ行き、胸水抜去処置を行ってもらいました。
飼い主さんは、なー様が粗相をしても決して怒らず、むしろ「できたこと」を褒め、愛猫が尊厳を保てるようにサポート。血栓と寝たきりになることを予防するため、毎日、足のマッサージをしました。
そして、住環境も改善。ベッドは高低差のないマットにし、床は段差をなくすなど、バリアフリーを意識。「寝る時とお留守番時は、ある程度の広さを保ちつつ、囲いを作り、徘徊と事故を防ぎました。あと、ご飯・お水、ベッドトイレを至近距離に置き、場所が分からず、混乱することがないようにしました」
また、高齢で体温調節が難しくなったため、手編みの洋服で保温も。
ブラッシングをするだけでなく、顔や足の裏、お尻付近を綺麗に拭き、清潔な状態で過ごせるようにも心がけました。
やがて、なー様が自力で立てなくなると、オムツのお世話や食事の補助も日々のルーティンに。けれど、それらを負担に感じることはありませんでした。「自分の時間、ライフワークなどを犠牲にして、闘病サポートを優先しましたが、その選択に後悔はありません」
「ありがとう」で見送った最愛の命
この子と、最後になるかもしれないクリスマスを一緒に過ごしたい。そんな思いから、飼い主さんはリースを作り、準備をしていましたが、クリスマスの5日前、医師からは「今夜どうなってもおかしくない状況」との厳しい宣告が。
それでも諦めきれず、「もっと生きてほしい」との思いから、12月21日、早めのクリスマスプレゼントとして、酸素ハウスを自宅に設置しました。
けれど、翌日、なー様の容態は急変。21年間、溺愛されたご長寿にゃんこは住み慣れた自宅で、大好きな飼い主さんに見守られながら、天国へ旅立ちました。「健気に、私の帰宅を待っていてくれたようで。オムツを取り換え、綺麗にしてあげてから、すぐでした」
目の前の現実を受け止められなかった飼い主さんは初め、「まだ行っちゃだめ」「クリスマス、一緒に過ごすって言ったじゃない」と泣きながら懇願。しかし、もう無理なのだと悟り、体を撫でながら「なー様がいてくれて本当に幸せだった。ありがとう」と21年分の感謝を伝え、大切な命を見送りました。
「なー様は、家族以上の深い絆で結ばれた存在でした。我が子のようでもあり、長い間、私の成長を見守り、守護してくれていたようでもあり、晩年はもはや私の一部となっていたような」
そう語る飼い主さんは、なー様との日々から多くのことを学んだといいます。「病気になっても、その日その日、一瞬一瞬を命の灯が尽きるまで生き抜く強さ、生き様は本当に立派でした。私は闘病生活中、看護や介護をする中で、無償の愛を捧げる行為の尊さを体験させてもらいました。愛というのは、こちらから与えることで真に満たされるものなのだなと」
そして、まだ心は痛むものの、「別れ」という苦しい事実も自然の摂理として受け止めようと思えるようになってきたそう。「来世というものがあるかは分かりませんが、病気の苦しみがなくなり、最愛の子が新しい世界へ旅立ったのだから、来世で幸せな生を享受できるようにお祈りしたほうが、愛を示すことになると思うようになりました」
なお、飼い主さんはご長寿にゃんこを看取ったからこそ、これから老猫をサポートする飼い主さんに、こんなアドバイスを贈ります。「普通にできていた生活全般に渡るサポートが必要ですし、いつ急変するか、分からないので長時間留守番をさせないなど、飼い主の時間、行動を猫に合わせ、ある程度、犠牲にする覚悟もいると思います」
愛猫が日々、弱っていく姿を見るのは辛いけれど、自分以上に戸惑い、苦しんでいる愛猫の気持ちを考え、たとえ、どんな状態になったとしても受け入れ、最期まで支えてあげてほしい――。そう話す飼い主さんが過ごしてきた日々は、「動物と生きる」を改めて考えるきっかけとなります。
人生観も人生も変えてくれた、なー様。その存在は、これからも飼い主さんの心の中で生き続けていきます。