岸田総理は保守本流の思想を継承するのか 参院選、日中正常化50年…課題山積み

北御門 孝 北御門 孝

自由民主党は、ご案内のとおり1955年に自由党と日本民主党が合同して結党した、いわゆる「保守合同」「55年体制」のスタートである。この流れを汲むため、党内には歴史的に二つの大きな流れが存在した。

旧自由党が源流の「保守本流」と旧日本民主党が源流の「保守傍流」あるいは田中秀征氏いわく「自民党本流」だ(「自民党本流と保守本流」著者:田中秀征、講談社)。当初、鳩山一郎(党首)、岸信介(幹事長)など、日本民主党のほうの勢力が大きかったので自民党本流とされたのだ。(敬称はすべて略させていただく)保守本流の流れを汲む歴代総理をあげると、吉田茂、石橋湛山、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、大平正芳、鈴木善幸、竹下登、宮沢喜一、橋本龍太郎、小渕恵三、麻生太郎。(佐藤栄作は岸信介の実弟でもあり双方からの指示を得られた総理だが、角福戦争の際には福田についた。)一方、自民党本流の流れを汲む歴代総理は、鳩山一郎、岸信介、河野一郎、三木武夫、福田赳夫、中曽根康弘、安倍晋太郎、小泉純一郎、森喜朗、安倍晋三。

では、目指すべき社会、政策の方針についてはどうか。自民党本流にはまず自主憲法制定があげられる。結党当初からの党是だと主張する。岸信介を祖父に持つ安倍晋三元総理は憲法改正への執着が強かった。また冷戦時代において、反共対決姿勢を前面に打ち出していた。それに対して保守本流は、憲法は必要があれば変えればよいという姿勢であって、田中角栄は記者に聞かれ「憲法なんて100年変えなくていいんだよ」と言ったとされる。

経済発展重視も特徴だが、先の大戦までの国策の誤りを認識しているところが自民党本流との大きな違いだ。また、歴史的事実として1956年の日ソ共同宣言(鳩山一郎内閣)、1972年の日中国交正常化(田中角栄内閣)、が為されたのであるから、その姿勢は自民党本流とは一線を画す。さらには、米国との対峙する姿勢についても差異が見られるのではないか。共産圏との接し方が違えば自ずと対米姿勢、あるいは米国から受ける扱いに差が生まれるのは当然だろう。

ところで、1955年からの流れを簡単に確認してみたが、現政権についてはどうなのか。岸田文雄総理は岸田派(宏池会)なので、保守本流の流れを汲む総理ということになる。しかしながら、自民党結党から66年が経過しているわけで、冷戦の終結をはじめ、当然ながら結党当初の図式がそのまま当てはまるわけではない。

現政権は課題山積である。夏に参院選が控えるが、さらに今年は日中国交正常化から50年の節目を迎える。「新しい資本主義」の具体的な政策や、対米・対中の姿勢から、岸田総理が保守本流の思想を継承する政治家かどうかという視点で今後を注目してみたい。

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