私大の地方受験は西高東低、トップ3は関西 早慶上智はゼロ「高飛車なわけではない」、日東駒専は充実

伊藤 大介 伊藤 大介

少子化が進む中、大学が地方受験に力を入れています。早慶上智やMARCH、関関同立、日東駒専、産近甲龍といった有名私立大学の実施状況を調べたところ、大半の大学が全国各地に試験会場を設け、受験生を呼び込んでいました。早慶上智など一部上位校は本格的な地方受験を行っていませんが、もはや少数派。さらに関東と関西で比較してみると、関西の大学が地方受験に積極的で、実施都市、会場数とも関東を上回る「西高東低」であることが分かりました。早慶上智に地方受験を行わない理由、実施校には地方受験の意義を聞きました。

地方受験実施しない早稲田「キャンパスの雰囲気感じてほしい」

今回の地方受験調査では、自校キャンパスは受験都市、会場にカウントせず、付属高校など系列校での実施は都市、会場数に含めました。

まず、早慶上智(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学)はそろって地方受験はゼロ。同じく難易度の高い国際基督教大学(ICU)も実施していませんでした。早稲田大学は「受験生にキャンパスの雰囲気を見て感じてほしいとの思いもあり、一般選抜においては地方での受験会場を設けていません」と説明します。慶應義塾大学は、地方出身者向けの給付型奨学金を導入していることを挙げ、「首都圏以外に住む受験生に安心して慶應義塾大学を進学先に選んでもらえるよう努めています」と書面で回答しました。

上智「高飛車に構えているわけではない」

一方、上智大学は「受けたきゃ来い、と高飛車に構えているわけでない」と強調します。1995年の阪神・淡路大震災以降、近畿圏から上智大学を受ける志願者は減り続け、現在は首都圏の1都3県で8割を占めるようになったといいます。法科大学院の入学試験を大阪で実施した際も受験者が少なく、担当者は「地方受験を求める声がまとまってあれば検討するが、それほど求められていないのでは」と需要の少なさを理由に挙げます。

東京理科大学は2005年度から導入し、2022年度入試では札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡の全国6会場で実施しています。東京理科大学は「地方受験者の便宜、および受験に要する経済的負担(交通費・宿泊費など)の軽減、さらには、本学の広報活動の一環として導入しました」と意義を説きます。

MARCHは4大学で地方受験実施 中央「地方国公立と併願しやすく」

MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)は立教大学を除く4大学で実施していました。中央大学と法政大学はともに札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡など10都市で開催し、明治大学は6都市、青山学院大学は横浜、名古屋、福岡の3都市で行います。

中央大学は2006年度から地方に受験会場を設けました。受験生の移動費軽減などのほか、地方は地元国公立大学との併願者の割合が高いため、学力上位層の出願を促進したいという狙いもあるといいます。

法政「コロナ禍でも受けやすく」

法政大学は1995年度に法学部のみ大阪に受験会場を設けるなど、試行期間を経て2007年度から全学部で地方入試を導入しました。担当者は「1990年代に比べて地方出身者は減っている」と上智大学と同様の地方出身者離れの傾向を認め、現在は首都圏1都3県で75%を占めているといいます。首都圏の受験生が中心となる中、なぜ地方受験を続けるのか。担当者は「(地方受験実施の)コストは大きいが、コロナ禍で地方受験は根強い人気がある。できるだけいろんな地域から本学を目指してほしい」と地方に会場を置く意義を強調します。

また、学習院大学は地方受験を行っていませんでした。

日東駒専は地方受験に注力、それでも関西には及ばず

日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)になると、地方受験への積極性がぐっと増します。東洋大学は16都市17会場、駒澤大学は12都市12会場、専修大学は19都市23会場と4大学とも二桁を超えてきました。

それでも、今回調査したところでは、地方受験都市数で1位が近畿大学(33都市、56会場)、2位が立命館大学(29都市、51会場)、3位が関西大学(27都市、31会場)と関西勢が上位を席巻しています。また、関西の大学は地方受験を1990年代には導入していましたが、関東は2000年以降と出遅れていました。ある関東の大学関係者は「1990年代以降、地方の志願者が減っている。地方受験をやっても、採算割れしている東京の大学もあると聞く。コロナ禍もあり、地方から東京へ子どもを送り出すのはますます難しくなっており、なかなか地方受験は増えないのではないか」と話していました。

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