「喉が詰まった!」ごはんを1としたら→パン2.6倍、もち103.6倍 いざというときは?医師に聞いた

渡辺 陽 渡辺 陽

東京消防庁によると、令和元年中にもちなどの食べ物や薬の包み紙などを飲み込んで窒息し、救急搬送された高齢者は1672人いたそうです。なかでも、1月にもちを喉に詰まらせる人が多く、そのリスクはごはんの100倍以上!近畿大学病院 総合医学教育研修センターの岩永賢司教授に対処法などについて伺いました。

もちが喉に詰まるリスクはごはんの100倍以上

――1月はもちを喉に詰まらせる人が多いそうですが、普段食べているごはんに比べてそんなに詰まりやすいのでしょうか。

「内閣府食品安全委員会によると、ごはんを喉に詰めるリスクを1としたら、もちは103.6倍も詰まりやすいのです。もちだけでなくパンも2.6倍、肉類が1.6倍、魚介類が1.2倍、果実類が1.2倍と考えられています」

なぜもちは詰まりやすいの?

――特に高齢者の方が喉に詰めやすいようですが、何か理由があるのでしょうか。

「高齢者は歯の機能が衰えて、噛む力が弱くなっています。奥歯がなかったり、入れ歯だったりすると、しっかり食べ物を噛めません。さらに、顎を安定させる力も弱まっていて、食べ物を噛み砕きにくくなっているのです。また、加齢とともに唾液の量が減って口の中が乾きやすく、食べ物をスムーズに飲み込みにくくなります。私たちは食べ物が喉に詰まりかけると咳き込んで出そうとしますが、高齢者はその力が弱くなっているため詰まりやすいのです」

――もちの粘り気も原因の一つでしょうか。

「粘り気だけでなく、もちは口の中に入れると温度が下がって硬くなるのです。硬くなると粘着性が高まり、喉にへばりつきやすくなります。もちを食べる時は、小さく切って、よく噛んで食べてください」

――パンもごはんに比べて2.6倍も詰まりやすいのですね。

「パンは水分が少なくパサついて喉にへばりつきやすいことと、唾液を吸収して粘り気のある塊りになってしまうため喉に詰まりやすいのです。パンを細かくして、しっかり噛んで食べるといいでしょう。」

――食べ物が口の中に入っている時に、お茶や水で流し込んでもいいのでしょうか。

「食べ物を流し込むと、喉に詰まりやすくなるので避けてください。食べる前にお茶や味噌汁で口の中を潤してから食べましょう」

喉に詰まった、どうすればいい?

――もちなどを喉に詰めてしまった!そんな時はどうすればいいのでしょうか。

「人は誤って食べ物を喉に詰めると、ユニバーサルチョークサインといって、喉を覆うように手を当てます。このサインが出たら、まず救急車を呼んでください」

――その後、応急処置をすればいいのでしょうか。

「口を開けさせて、はっきりもちが見えたら取り除きます。やみくもに指を入れると、かえって食べ物が喉の奥に入ってしまうのでやめてください。次に患者さんに声を出してもらいます。声が出たら喉に少し隙間があるので、背部叩打法という方法を試してみてください。患者さんに前屈みになって咳をしてもらって、肩甲骨と肩甲骨の間を叩きます」

――声が出ない時は喉がふさがっているのですね。どうしたらいいのでしょうか。

「腹部突き上げ法(ハイムリック法)を試してみてください。患者さんに立ってもらって足を少し広げてもらい、後ろに立って患者さんの背中と自分の胸を密着させます。足の間に左足を入れて、みぞおちに右の拳をあて、拳を左手で覆って突き上げます。それでも食べ物が外に出ずに心肺停止になった場合は、気道確保(顎先を持ち上げて頭を後ろにそらす)と胸骨圧迫、いわゆる心臓マッサージをします。マウストゥーマウスは必要はありませんが、気道確保の際に時々口の中を覗いて、食べ物が見えて簡単に取り出せそうなら取り除いてください。AEDがあればAEDを使います」

――背部叩打法、腹部突き上げ法を知っておくと、いざという時に安心ですね。

「家庭で窒息した場合、救急車が到着するまで家族が一切何もせず、様子を見ているだけということが多いのです。そうすると助かる命も助からないことがあります。救急車を待つ間、必ず応急処置をしてください」

岩永 賢司 平成2年近畿大学医学部卒業。近畿大学医学部第四内科助手、同呼吸器・アレルギー内科講師、准教授を経て令和3年4月より近畿大学病院 総合医学教育研修センター 教授。同院NST・嚥下委員会委員長。総合内科専門医・指導医、呼吸器指導医、アレルギー指導医。

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