不登校児の親になって初めて知ったこと「つらいのは子どもだけではなく、親もつらく苦しい」

長岡 杏果 長岡 杏果
無理して学校に行こうなんて言えない。でも将来が心配…親の気持ちも揺れ動きます
無理して学校に行こうなんて言えない。でも将来が心配…親の気持ちも揺れ動きます

文部科学省の問題行動・不登校調査2020年度によると、30日以上登校せず「不登校」とみなされた小中学生は前年度より8.2%増の19万6127人と過去最多だったことがわかりました。小中高校から報告された児童生徒の自殺者数も415人で最多となりました。舞さん(仮名・30代)には不登校のお子さんがいますが、不登校児の親になって初めて知ったことがあるといいます。それは「つらいのは子どもだけではなく、親もつらく苦しいということ」だったといいます。

――不登校になったきっかけを差し障りのない範囲で教えてください

(舞さん)不登校のきっかけは昨年子どもの担任をしていた女性の先生です。

入学早々に怒鳴られ、理不尽なことで怒られ、毎日子どもたちは口汚い言葉で罵られ、娘は怖くて学校に行けなくなりました。不登校の娘が久しぶりに登校すると担任から「何しに来たん?」と言われ、私もその言葉に耳を疑いました。それが久しぶりに勇気を振り絞って登校した娘にかける言葉なのかと、ものすごく腹が立ちました。

担任とは幾度となく管理職の先生を交えて話し合いをしましたが、担任は「そんなこと言ったかな~」「覚えてない~」「忘れた~」と真剣に話合う気のない様子でした。

管理職の先生は彼女の性格を把握しており、「彼女のヒステリーは病気なので治らないですね。彼女がひどい言葉を使っていることは私も知っています」とこちらの訴えについては理解を示してくれていましたが、改善に至ることはありませんでした。ですので担任の異動が決まり心底ほっとしました。

――お子さんに学校に行きたくないと言われてどんな気持ちでしたか?

(舞さん)ショックでした。いつも元気いっぱいだった娘が憔悴しきっている姿を見るのは本当につらかったです。一点を見つめて動かない娘を見て胸が痛みました。無理して学校に行きなさいなんてことは言えず、娘の行きたくないという気持ちを最大限に受け止めました。もちろん初めてのことなので、行かないことが正しい選択なんだろうかと悩みました。学校に行かなくて将来は大丈夫なんだろうか。この子の将来はどうなってしまうんだろうかと不安でいっぱいでした。

不登校を経験したことがない人たちからは、「なんで無理やりつれていかないんだ」「甘やかすな」「ただのわがままだ」など心無いことをたくさん言われました。なぜ何も知らない赤の他人にそんな事を言われないといけないんだろうかと落ち込みました。たくさんの心無い言葉により追い詰められ、私のメンタルはどんどん崩壊し、生きていることが嫌になりました。

私は当事者になるまで、不登校の子どもを持つ親がこんなにつらく苦しい思いをしているとは想像もしていませんでした。そして、メンタルを正常に保つことがいかに難しいことかもわかりました。

親の育て方が悪いんじゃない?家庭に問題があるんじゃない?と親や家庭を悪く言う人も中にはいますが、長年学校の先生をしていた母は「家庭に問題がある子は家に居場所がないから学校に来るんだよ。家庭よりまだ学校の方が居心地いいからね」と話してくれました。

   ◇   ◇

親の心のケアも大事

不登校は親のせいでも家庭環境のせいでもありません。不登校児にとって家庭は傷ついた心身を休めることができる温かな場所なのです。親として葛藤はあったとしても、学校に行かなくていいよと言ってあげるのは本当に勇気ある決断です。その反面、実際に子どもが不登校になると、親は子どもの未来を心配し、これでよかったのだろうかと悩み苦しみ、周りにも心を閉ざすようになり孤立していきます。

舞さんが感じていたように、子どもが不登校になると不安や社会に取り残される恐怖、周りの心無い言葉や学校の冷たい対応などにより、親の心はどんどん蝕まれていきます。親が笑顔でいることが何よりも子どもの心の安定につながるため、親の心のケアも大事になっているかもしれません。

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