「学校へ行きたくない」と感じていたり、何かしらの出来事やきっかけがあって不登校気味になってしまった子どもたちが、コロナ禍による「学校生活の変化」で、今までより過ごしやすくなったり、学校へ少しずつ行けるようになったりしたケースがあるようです。全員マスク着用、友達とは距離を取って過ごす…といった状況が、子どもたちに「生きやすさ」「過ごしやすさ」を与えてくれたという一面もあるようです。「コロナ禍だからこそ自分の生活や気持ちを立て直すことができた」というお子さんについて、3人のママにお話を聞いてみました。
辛いのはどうやら自分だけじゃない…
学校に行きたくない理由は自分でもよく分からないし、登校してしまえば楽しいけど、たまに気持ち悪くなってしまう、という低学年の女の子。コロナ禍でどのような変化があったのでしょうか。
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▽Yちゃん、8歳(小学校2年生)
1年生になったばかりのとき、早くも3日目くらいから「お休みしたい」「気持ちが悪い」と言うようになりました。励まして登校させたり、教室まで付き添ったりしながらなんとか行けていましたが、あるとき教室で吐いてしまったんです。その日から数日後に登校できたのですが、保健室で過ごすこともありました。1年生の間は、1週間に1~2日は休む、登校できても気分が悪くなったり、給食が食べられなかったり、保健室に行ったり…という感じでした。学校では楽しく過ごせる時間もあるし、特に「これが嫌で行きたくない!」という理由がなかったし、病院で胃や腸も診てもらったのですが何ともなく…とても不安でした。
しかしコロナ禍の休校明け、娘以外にも授業中に気分が悪くなってしまったり、不調を訴えて休む子も出てきました。その中で「どうやら辛いのは自分だけじゃない」という気持ちが逆に心を軽くし、「皆も頑張ってるから、自分も頑張れるかも」と思えるようになったみたいです。2年生の今は毎日登校できていて、保健室で過ごすこともほとんどなくなりました。
皆も学校へ行っていないという安心感
不登校気味になっていた高学年の女の子。昨年の緊急事態宣言で3カ月間休校になった際、「皆も休みだと思うと、気後れしなくて済む」と気持ちが軽くなり、少しずつ登校できるようになったそうです。
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▽Tちゃん、12歳(小学校6年生)
5年生でクラス替えになった際、「女の子グループ」になじめず、不登校気味になってしまった娘。それまでは、同じクラスにいい距離感を保ってつき合える子が何人かいましたが、その子たちともクラスが離れ、「つるみたがる女の子」ばかりのクラスになったようです。不登校気味のときは、週の半分は休んでいました。登校できても、カウンセラーの部屋か保健室で過ごすことも。
コロナで3カ月間の休校中、「皆も休んでるから」と気後れしなくなり、自分のペースで好きなことをしたり、仲の良かった子と久々に連絡を取って「今のクラス好きじゃないけど、それはそれでマイペースでやっていこうよ」とお互いを励まし合ったりしているうちに、少しずつ気持ちを立て直すことができたようです。休校明けから、登校できる日が徐々に増えていき、今ではほぼ毎日行っています。
気持ちが切り替わったのか、何かが吹っ切れたのか(?)、今のクラスの子ともなんとなく上手くやれているようです。
マスクをすることで不安感が薄れた
人の顔色をうかがいがちな中学1年の男の子。コロナで全員マスク着用となり顔が半分隠れるなどで、なんとなく安心感を得られたというケースもあるようです。
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▽Kくん、13歳(中学校1年生)
「ボクが言ったこと、ダレソレくん気にしたかな」「ボクの態度、マズかったかな」など、割と小さい頃から人の顔色をうかがい、人と接することに不安感を抱く息子。「自分の育て方が悪かったのか…」と悩んだりもしました。一度担任の先生とスクールカウンセラーに相談したところ、「そういう気質の子、けっこういるんですよ」と言われたものの、やっぱり不安はぬぐえず…それでも学校は割と楽しそうに行っているので、様子を見ていました。
中学校に上がるにあたって、新しい友達が増えることは喜ばしい反面、「また気を遣う日々なのかしら」と悩みましたが、全員マスク着用、ソーシャルディスタンスを守る中で、息子の「顔色うかがい」が減っていったんです。「人がどう思っているか、自分がどう思われているか」言わなくなったな~と。
必要以上に話さなくていい距離感、顔の全体が見えないから気にすることが減ったなど、息子にとっては今の状況がとても楽で、過ごしやすいようです。いつまでもこの状況が続くわけでもないし、いいのか悪いのか分かりませんが…今はよしとしています。
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「皆も学校に行っていない」とホッとしたり、「程よい距離感が保てる」と安心することで、子どもの気持ちが安定することは決して悪いことではありません。
学校に行けず孤立してしまう、制限・中止になることが多くて可哀そう…コロナでつらく悔しい思いをすることもたくさんある中で、「生きやすさ」「過ごしやすさ」を得られた子どもも少なくありません。大人でも「リモートで煩わしい人間関係から少しだけ解放されて、過ごしやすくなった」など、精神衛生上のメリットを感じることはあるのですから。
こんなご時世だからこそ、気持ちや生活を立て直すいい機会と捉えてもいいのかもしれません。