左側の視界が見えているのに、無視してしまう!?…検査をしても気づきづらい「半側空間無視」とは 医師に聞いた

ドクター備忘録

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右脳にある頭頂葉の損傷によって起こる半側空間無視。症状の詳しい内容や発症原因について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――半側空間無視とは、どのような病気なのでしょうか?

多くの場合は左側の視界が見えているのに気にしなくなってしまうという症状を指します。例えば、食事を目の前に出された際に右半分だけを食べたり、左側に何かがあってもそれに気づかずぶつかったりしてしまう、というのもこの病気の症状と言われています。また、その他の特徴として、目の検査をしても“見えている”と診断されるため、本人はもちろん周囲の方も含めて発症に気づきにくいということも分かっています。

――脳卒中との関連性はあるのでしょうか?

半側空間無視は、右脳の頭頂葉という場所で脳梗塞や脳出血、または脳腫瘍などが起こることで引き起こされます。つまり、脳卒中と関連して発生することが多いとされています。

――なぜ左半分だけ無視されるような症状が起こるのでしょうか?

右脳は左右両方の視界を認知しているのですが、左脳は右側のみを認知しています。つまり、たとえ左脳が損傷しても右脳が左右の視界を認知できるのですが、右脳が損傷した場合には左側の視界を認知できなくなってしまうんです。

――発症に男女差や年齢差などはあるのでしょうか?

いえ、脳のどの部分を損傷したかが原因となるため、男女差や年齢差は関係ありません。

――リハビリや治療法はあるのですか?

半側空間無視は、右脳にある頭頂葉が損傷したことによって起こる後遺症とされているため、薬や手術といった手段ではなく、意識的に左側へ注意を向けるようなトレーニングを行います。例えば、中央から左側に向かってものを探していき、徐々にその範囲を広げていくという方法があり、リハビリには日常生活の中で意識を左側に向けるということが大切です。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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