水族館のお魚「おいしそうと思ったことありますか?」素朴な質問と、正直すぎる館長さんの答えに23万人が賛同

塩屋 薫 塩屋 薫

水族館ですいすい泳ぐ魚たちを見て、思わず「おいしそう…」と思い、それと同時に後ろめたさを感じたことってありませんか? あるTwitter投稿での水族館の館長さんとお客さんとの絶妙なやり取りがSNSで話題になっています。

「お魚たちのこと おいしそうと思ったことありますか?」と22歳女性から届いた質問シートへの問いに、「毎日思っています。」と回答したのは、北海道北見市で淡水魚のみを飼育展示する「北の大地の水族館(山の水族館)」の山内創館長。

その素直すぎる返事に、SNSでは「正直で宜しい」「禁断の恋のようで、勝手にハラハラしてしまいました」「帰りに寿司屋行きたくなるみたいに、おいしそうって思っちゃう人結構いてホッとした…」「そういう方向性から水族館の魚を見る事も大事。そこから料理や漁業に興味を持ってもらえるかもしれない」と、賛同する声が続々。

これまでも、次々とおもしろ回答を生み出している山内館長の質問シートや反響について聞いてみました。

──SNSで23万人以上の方からいいねがつきましたね。

水族館で魚に対する感情は人それぞれだと思うので、「おいしそうと思ってもいいんだよ」と言うことが伝わったのかなと感じています。

──たしかに、水族館の方も同じ気持ちなのだと妙にほっとした気分になりました。

「おいしそう」ということは魚が健康に育っている証拠で、いいことかなと。

──過去の投稿でも「北の大地の水族館は赤字ですか?」の問いに「トータルで見れば赤字ではないです」、「もうちょっと近くなりませんか」の問いに「引っ越すと近くなりますよ」など、くすっと笑ってしまうものが多いですね。

おもしろい質問を投げかけてくれる方がちょこちょこいて、有り難いです。

「なぜ人がこないのか」という質問には…

──これまで回答に困った質問はありますか?

基本的にはすべての質問シートがありがたいです。でも、1年前ぐらいにあった8歳の男の子からの質問「非常によかったのになぜ人がこないのか」は、最初は困りましたね(山内さんは「俺も知りたい」と回答)。でもこのやりとりを投稿したらいいねがたくさんつき、たくさんの方が見てくれました。

──自虐的なユーモア視点がおもしろいです。回答で心がけていることはありますか?

お客さまがわざわざ時間をかけて書いてくださっているので、失礼な事は書かないようにしようとか。どんなものがきても、ポジティブにとらえておもしろくしたいし、すべていい方に解釈するようにしています。

──そもそもこの質問シートを始めたきっかけは?

元々あったアンケート用紙に質問を書いてくれる方が多かったので、2018年に開始しました。館内には各飼育員による生き物についての回答などを掲示していて、お客さんとのコミュニケーションが増えればいいなと。でも生き物関連以外にも、ちょっとした飼育員への興味、素直な疑問などが結構な割合であることに気がつきまして。

──そちらに関しては、山内さんの個人アカウントで答えているのですね?

はい。館内や公式アカウントで答えるにはちょっとふざけ過ぎているかなと(笑)。以前は仕事とは関係ない、水族館前の雪山に飛び込む短い動画とか、この極寒の地での冬生活を楽しむ様子の投稿をして何度かバズったことがあったのですが。質問シートの投稿きっかけで館内の掲示も全部見たり、生き物について知ってもらえたらうれしいですね。

──来客数の変化など反響はありましたか?

直接的にはそんなに反響があった訳ではないですが(笑)、おかげさまで何回か「館長に会いに来ました」と声をかけてくれる方もいて、うれしかったです。

「人間でこそ魚の良さが分かると思います」

──ほかにも、館内に変わった試みなどはあるのでしょうか?

お客さまと話せるように「館長が出てくるボタン」というのがあります。押されるのは週に2~3回ぐらいですかね。いない日はボタンを押しても出てこないので、はずれの日になりますけど。あとは生き物の解説板って難しくて読まない方が多いので、LINE風やポケモンGO風、小学校の時に女子が書いていたようなプロフィール帳風など、どうやったらくすっと笑えたり、読みたくなるか考えて作ったりしていますね。

──どれも個性的ですね。ちなみに、私も質問シート風に尋ねてみたいのですが、魚の一番の魅力とは?

簡単には答えにくいですが(笑)、魚って背骨のある脊椎動物の中で最も多様性の高い分類なので、毎日見ていても発見があります。それに加えて水中という自分たちは生きていくことができない世界を生きてるっていうのがやっぱり魅力的かなと。

──ではもうひとつ、魚になりたいと思ったことはありますか?

あんまりないですね。魚の魅力のひとつに、おいしさもあると思うので。魚になってしまうと調理しておいしく食べるということができず、魚の魅力をひとつ失ってしまうので、人間でこそ魚のよさが分かると思います。

──さすがです!最後に、水族館で特におすすめの点を教えてください。

日本最大級の淡水魚で、北海道の川や湖を象徴する魚・イトウの展示にこだわりがあります。1m以上という大きさにもロマンがありますし、絶滅危惧種ですが、自然に負担をかけない数だけ天然のイトウをもらえる特別ルートが作ってあり、養殖とは異なる顔の形など「こういうかっこいい魚なんだよ」っていうのを見てほしいです。また、季節により見られる生き物や展示物が違うので、年間2~3回来てもらえたらうれしいですね。

   ◇   ◇

1978年に開業し、2012年のリニューアルオープンで魚の暮らしぶりをリアルに再現した展示方法へ進化した「北の大地の水族館」。激流に流されぬよう力強く泳ぐ魚の姿を見上げる日本初の滝つぼ水槽や、冬には凍り付いた川面下での魚たちの様子が見られる世界初の水槽など、北海道に息づく川辺の生き物たちの世界を鑑賞できるとのこと。質問シートも楽しみのひとつになりそうです。

■「北の大地の水族館」https://onneyu-aq.com/
■山内創館長のTwitter https://twitter.com/suymuc

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