鼻にぐっと来るにおいがある胃腸薬「正露丸」について、20歳~69歳の男女 1000人のうち、過半数の人が正露丸のにおいを「嫌い」と回答しました。正露丸を販売する大幸薬品(大阪市西区)がアンケート調査を行い、発表しました。なぜ100年以上の歴史を持つ看板商品のにおいが嫌われていることをわざわざ公表したのか。そこには、ロングセラーブランドを後世へ受け継ぐための大幸薬品の戦略がありました。
嫌いは54%、好きの4倍超
調査は2021年9月、ウェブアンケート方式で行われました。
正露丸のにおいを「嫌い」「やや嫌い」と答えたのは計約54%で、「好き」「やや好き」と答えた計約12%の4倍以上に達しました。圧倒的に嫌われてます。
大幸薬品の広報担当者は「いいにおいと言えるものではないので、『好き』という人は少ないだろうなと思っていました(笑)」と嫌いが多数派を占めることは折り込み済みだったといいます。一方、「『臭い』と言われることも多いのですが、『臭いけど効くんだよ』『においを嗅いだだけで腹痛が治りそう』という声もあります」と「臭い→効きそう」というイメージにもつながっていると説明します。
20代の20%、正露丸のにおい知らない
さらに調査で明らかになったのは、正露丸の若者離れ。30代以上の世代では、正露丸のにおいを「嗅いだことがない」と答えたのは 5.1%にとどまり、約95%が正露丸のにおいを知っているという高い認知度が示されました。一方、20代の約20%が正露丸のにおいを「嗅いだことがない」と回答。20代女性では24%に達し、テレビや車、新聞などに続いて、正露丸も若者が接する機会が失われているようです。広報担当者は「正露丸のユーザーが高齢化しているとみられていましたが、やはりそうなのか、と受け止めています」と話します。
「臭いけど効く」調査発表を家庭内で話題に
今回、大幸薬品が調査したのは、若者離れを食い止めたい、という思いがありました。薬箱に入れると、薬箱の中全体ににおいが移るほど独特な臭さを持つ正露丸。そのにおいがあればこそ、「おばあちゃん家のにおい」などとして人々の記憶に刻み込まれ、100年以上、常備薬として親しまれてきました。広報担当者は「調査結果が家庭内で話題になり、正露丸を伝承していってもらえたら」と狙いを明かします。また、正露丸のにおいが苦手な人には、薬を糖衣でくるんだセイロガン糖衣Aがあり、お勧めしています。
また、正露丸のにおいは、何のにおいに似ているか?との問いには「漢方のにおい」が約7割、「歯医者さんのにおい」が約2割を占めましたが、いずれも不正解。ブナやマツの原木を炭化した時に出る煙を冷却、液化して「木タール」を作り、この木タールを蒸留精製してできる生薬「木(もく)クレオソート」が正露丸の主成分で、においのもとだそうです。正露丸はにおいのきつさ故に「劇薬のにおいではないか」「発がん性がある」などと誤解されてきましたが、植物由来の生薬であることは大幸薬品ホームページでも強調しています。
においが嫌われている正露丸ですが、3人に1人が常備していることも調査で分かりました。一方、5人に1人が薬箱や常備薬を持っていない、と回答しています。広報担当者は「子育て世代でも薬箱を持っていないケースがあったので、薬箱、常備薬の必要性を伝えていきたい」と話していました。
ネガティブな結果もあえて調べ、公表し、正露丸の話題を提供する。親から子へ受け継がれるべく、大幸薬品の試みは続きます。