「もって数日の命」片目を失った小柄な猫 「この子と一緒に生きていこう」その日から5か月が過ぎた

古川 諭香 古川 諭香

生きていると、運命的な出会いを経験することがあるもの。飼い主Rさん(@ako_nibl)は今年の6月、片目が失明し、片足が骨折していた1匹の猫と遭遇。命の選択を迫られることとなりました。

「この子は長く生きられない」と言われた生後7カ月の保護猫

その日、飼い主さんは仕事の帰宅時、道路の端でうずくまっている猫を発見。車がギリギリを通る狭い道路だったため、このままでは交通事故にあうかもしれないと感じ、保護を決意しました。

よく見ると、猫の目は白濁しており、片足を引きずっている状態。骨格はしっかりしているのに小さく、やせ細っていました。

その日は、かかりつけの病院が休みであったため、飼い主さんは初めての動物病院へ。子猫だと思っていた小さな命は、生後7カ月ほどだと判明。脱水症状を引き起こしていたため、点滴と注射での処置が行われました。

今できることは、これくらいしかない。そう口にした獣医師は、命の選択を考えさせられる言葉を飼い主さんに告げもしました。「この子はこのまま普通に歩けないかもしれないし、弱っているから長くは生きられない。もって数日。できることはしたから、元の場所に戻すのもひとつの選択。あなたが悪いわけじゃない」

それを聞いた飼い主さんは厳しい現実に大きなショックを受けましたが、目の前で生きようとしている命をなんとしても助けたい気持ちが勝り、翌日かかりつけ医へ。「鼻水が酷かったので抗生物質の注射と、背骨のレントゲン撮影ノミダニ駆除、便検査などをしてもらいました」

この子と一緒に生きていこう。そう決めた飼い主さんは、「ちび」という名前をプレゼント。

おうちにはすでに2匹の先住猫がおり、便検査で寄生虫がいることが判明したため、しばらくの間、ちびくんには隔離部屋で過ごしてもらうことに。

「排泄時の清掃はもちろん、トイレ本体もこまめに洗浄・消毒し、使用したタオルは処分していました。私自身も触れるたびに手洗い消毒して、先住猫に移らないように気をつけました」

また、不安で鳴くちびくんが少しでも落ち着けるように猫が安心すると言われている曲をYouTubeで検索し、再生。できるだけ心地よく過ごしてもらえるよう、空間作りに気を配り、ちびくんを見守り続けました。

すると、ちびくんは快方へと向かい、元気な姿を見せてくれるように。保護当初から鼻風邪の症状が治らないため薬は欠かせませんが、今では足を引きずっていたことが嘘のように毎日、元気に部屋中を走り回っています。

「ジャンプなどは他の子と比べると、あまり得意ではないようですが、生活に全く支障はなく、階段やキャットタワーにも難なく登ります」

片目は現在も白濁していますが、飼い主さんはうっすら見えているのでは…と思っているそう。

「目薬などは使っていませんが、目やにが固まって目が開けにくそうな時には顔は拭いてあげています。もう片方の目は保護当時より良くなっているのか、緑色のお目目が見えています。よく私たち家族を見上げてくれるんですよ」

人間に甘え、先住猫に片思いする愛猫ちびの日常

厳しいお外の環境を生き抜かなければならなかった野良猫の中には、警戒心が強い子も多いもの。しかし、ちびくんは人間や他の猫に対してフレンドリー。威嚇をしたり唸ったりしたことは1度もないのだとか。

遊ぶのも大好きで、イタズラ好きなちびくんには末っ子らしいかわいさがあるよう。「とにかく甘え上手。歩くたび、ついてきてすりよってきます。構って欲しい時には膝の上に乗り、肉球で人間の顔をタッチします」

先住猫たちとはまだ仲良くなれていませんが、飼い主さんいわく、一緒の空間にいる時間は増えてきているそう。「ちびは先住猫が大好きで、片想いの構図になっています。怒られてもめげず、隙あらば近寄り、受け入れてもらえるよう、毎日頑張っているようです」

ちびくんは先住猫が体調を崩した時、近くにおもちゃを持っていくという優しさを披露したことも。「一緒に遊びたいけれど、体調が悪いことを理解したのかも。やっぱり優しい子だなと思いました」

ちびくんの片思いが実るよう、飼い主さんは先住猫を優先しつつ、できるだけ平等に接したり、小競り合いの時には、あえてあまり介入しないようにしたりし、サポート。食事の時には少し距離をあけ、どの子も落ち着いて食べられるように工夫しているのだとか。

「我が家で暮らしている猫はみんなそれぞれ色んな環境のもと保護した子。保護を必要とする世界中の猫ちゃんたちがひとりでも多く、素敵な温かな家族と巡り会って欲しいです」

そう語る飼い主さんの横には、マイペースに過ごす愛猫たちの姿が。3匹の保護猫たちに「今日」があるのは、偶然出会った命を助けたいと願った飼い主さんの優しさと覚悟があったからこそ。

その日常を目にすると、見て見ぬふりできてしまう小さな命との向き合い方を考えさせられもします。

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