今から8年前、生後わずか1カ月ほどだった「つくね」ちゃん(女の子)は、家族とはぐれ、ひとりぼっちになってしまいました。ほんの小さな誤解がきっかけだったといいます。命の行き先が定まらぬまま、つくねちゃんの前に現れたのが、Xユーザー・猫目さん(@nekomeyome)一家でした。
悲しい別れのあとに訪れた子猫との出会い
当時、飼い主さん家族は先住猫を亡くしたばかり。胸にぽっかりと穴が空いたような日々を過ごしていました。その矢先に届いた突然のお迎えーー運命は、思いもよらぬ形で動き始めたのです。
「我が家の隣家の倉庫に野良猫一家が住みついていました。ある日、一家が引っ越し中に最後に残った子猫を『捨てられた』と誤解した隣人が保護したようなんです。そして、いつも我が家の窓辺にいた猫の姿がないことに気づいた隣人は亡くなったことを察して、『さみしいだろうから…』と連れて来た子猫ーーそれが生後推定1カ月のつくねです」
2017年10月6日、つくねちゃんは飼い主さん一家のもとで暮らし始めました。
「まだ、はっきりと目が見えていなかったためか、つくねは環境が変わったことを気にしていない様子で、すぐに懐いてくれました。食べるより眠るのが好き。よく遊ぶ子猫でしたが、体重がなかなか増えなくて…2歳くらいまで平均体重を下回っていたのを覚えています」
あまりに小さく弱々しかったつくねちゃんですが、この日を境に、飼い主さん家族の一員として新たな猫生を歩み始めたのです。
「また失うかも…」不安を抱えつつも“猫中心の暮らし”へ
つくねちゃんを迎えたその日から、飼い主さん家族は日々、不安と隣り合わせだったといいます。
「毎日、戦々恐々としていました。小さなつくねを前に、『この子まですぐ命を落としてしまったらどうしよう』と怖くてたまらなかったんです。先住猫を失った悲しみを抱いたまま、ミルクを飲ませるところから猫を育てるのも初めてで、大きなプレッシャーを感じました。寝不足やストレスで胃と肌がボロボロに…最近になってようやくこのときのことを笑って話せるように。良い思い出のひとつになりました」
それでも毎日は確実に前へ進んでいました。つくねちゃんはゆっくりと成長し、家には少しずつ新しいリズムが生まれていきます。
「自然と猫基準で物事を考えるようになりましたね。家具やインテリアを選ぶときは、猫が嫌がらない素材、爪あとが気にならないもの、掃除しやすいデザインなどにすると後悔が少ないと気づいたんです。選択肢を絞ることで、気に入るものを探すのが楽しくなりました」
悲しみで止まっていた心は、気づけば柔らかく動き出していました。つくねちゃんは、大きな癒やしを与えてくれる存在になっていったのです。
ともに歩んだ日々を振り返って、深まる愛情の絆
つくねちゃんは現在8歳。あの小さかった子猫は、すっかりたくましく成長しました。
「つくねは、少し神経質なところがあります。地震をはじめ、びっくりすることがあると自分の毛をむしってしまうんです。そんなときは、一緒に遊ぶ時間を増やしたり、新しいおもちゃで気をまぎらわせたり…ドーナツ型のベッドを買ったら、毛をむしるのを忘れるくらいインパクトがあったようで、『いい買い物をしたな』と思っています」
そして今、飼い主さんにはひとつ、つくねちゃんにお願いしたいことがあるといいます。愛猫との別れを経験したからこそ胸に浮かぶ、切実な思いでした。
「噛み癖があるので、いろいろ対策はしているのですが何とか落ち着いてほしいなと…つくねには、『私も8年分老いて傷跡が残るようになりました。君がいなくなったあと、この傷跡を見たらきっと泣いてしまう…今から寂しくなってきているので、何卒ご検討のほどよろしくお願いいたします』と伝えたいですね」