冷凍ギョーザの無人販売店や自動販売機が、京都市内でじわじわと広まっている。新型コロナウイルス禍で自宅での食事が増える中、24時間購入できる手軽さが多くの客を引き付けている。食欲の秋、ギョーザ販売の「ニューノーマル」となるか。
9月下旬の夜。京都市中京区河原町通丸太町下ルにあるガラス張りの店に、サラリーマンらが入っていった。開店して約1カ月半の冷凍ギョーザの24時間無人販売店「祇園餃子」だ。
大型冷凍庫に詰め込まれた36個入りセットを取り出し、料金箱に千円を入れて購入する。中京区の主婦浅田あやさん(45)は「手軽に作れて、子どももはまっています」と笑顔を見せた。
経営するのは、クリーニング店社長も務める福田晃正さん(59)。人件費がいらず、狭い敷地で開業できるコインランドリーに着想を得て、異業種への進出を決めた。自身は中華料理店を100軒食べ歩くほどのギョーザ好きで「他人を気にせず好きな時に購入できるので、新たな客層を開拓できるはず」と期待する。
左京区岩倉の住宅街には4月、冷凍ギョーザの自販機が登場した。設置したのは中華料理店のマルシン飯店(東山区)で、気軽に店まで来られないファンのために看板メニューを届けようと導入した。店の隣の生ギョーザ直売店で製造し、今では1日約500個を売り上げる人気ぶりだ。11月ごろに右京、伏見、山科区で計5台を導入する予定という。
同店以外にも、伏見区や上京区でギョーザの自販機が設置されている。全国的にも無人販売店が増えている。多彩な冷凍食品がある中で、なぜギョーザなのだろうか。
ギョーザの販売や流通に詳しい一般社団法人「焼き餃子協会」(東京都)の小野寺力代表理事(45)は、低コストで大量生産できる点が冷凍食品に向いているとみる。コロナ禍で非対面の販売が消費者に受け入れられたといい、最近では他業種からの参入も増えている。さらに「ニンニクのにおいが気になり、外で食べにくい女性からの隠れ需要もある」という。
自販機の進化も一役買っている。東京都のメーカー「サンデン・リテールシステム」が1月に発売した冷凍自販機「ど冷えもん」は棚の幅を最大22センチ、高さを9センチまで可変でき、さまざまなサイズの冷凍食品を収納できる。
現在、ど冷えもんは45都道府県で設置され、ラーメンやもつ鍋などを扱っている。その中でも、京都府内では6割超を冷凍ギョーザが占めている。サンデン社は「京都では戦後からギョーザ文化が根付き、中華料理店も多い。そうしたお店が採用しているのでは」との見方だ。
ちなみに、家計調査で京都市民はスーパーでのギョーザの購入額が3130円(20年)と全国4位。コロナ禍により家族で夕食を囲む時間も増え、さらにギョーザが食卓を彩りそうだ。