橋の欄干から生えた京名物「ド根性松」 クレーン車使い深夜のお引っ越し、移設先は?

村山 祥栄 村山 祥栄

 

京都の出町柳駅前に架かる河合橋の欄干からひょっこり芽を出し、逞しく育った一本のクロマツ。この松は、橋の石やコンクリートの隙間に張り巡られらた菌糸から水分、養分を得ながら12年以上も見る人に元気を与え続けてきた名物松で、地元では「ド根性松」の愛称で親しまれてきた。

平成30年からはじまった河合橋の改修工事が大詰めを迎える中、地元からは「ド根性松はどうなってしまうのか」という意見が市役所にも多数寄せられていた。所管の建設局は何とか残せないものかと思案を巡らし、遂に橋の対岸、鴨川と高野川の合流地点の中州にある三角公園(別名「鴨川三角デルタ」)にお引っ越しさせることとなった。

8月、河合橋の歩道拡張工事は遂にド根性松が鎮座する北側歩道に差し掛かった。ド根性松に気を使いながら、北側歩道は順次解体されていく。

10月、歩道はド根性松の周りを除きほぼ撤去が完了。あとはド根性松の移設を待つのみとなった。

11月8日、日中にド根性松の足場となっているコンクリート片を歩道から切り離し、鉄筋だけでコンクリートを支えている状態になった。松をコンクリートから剥がし土に植え替えると、松が栄養過多になり枯れてしまうことから、コンクリートごと移設し、松はコンクリートに張り付いた状態のまま公園の地中に埋める計画だ。引っ越しはクレーン車を使い通行規制が必要なため、交通量が減少する夜間作業と決まった。

21時、引っ越しが開始。松の根が絡みつくコンクリート片をクレーンで吊り、鉄筋を丁寧にバーナーで外していく。取り外されたコンクリート片は、そのままトラックに載せられ、50メートル先の公園へ引っ越しだ。そして、既に掘られていたコンクリートがすっぽり収まる穴の前で、クレーンの到着を待つ。再びクレーンに吊られ、所定の位置に移動、その後丁寧に土が掛けられた時点で一旦、作業終了。

時計は23時30分、樹木医や担当課長など関係者約20名が見守る中、約2時間半のお引越しが完了した。作業途中から雨が降ってきたため、松を土に定着させるための菌を蒔くという作業ができなくなり(雨で流れてしまうため)、最終工程は翌日へ持ち越し。翌日、菌を蒔き、土を被せ、ド根性松のお引っ越しは無事に完了した。

 

さてさて、長年京都市民に元気を与えてくれたド根性松はしっかり土に根を張り定着できるのだろうか。環境は変わったが、今一度ド根性松の根性に期待したいところだ。

 

引っ越し先は「鴨川三角公園」。京都市左京区下鴨宮河町、京阪鴨東線出町柳駅下車徒歩1分の場所。

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