「11・5」英国では打ち上げ花火を楽しむ日 400年前に起きた事件がきっかけ

北御門 孝 北御門 孝

 今年も11月5日が近づいてきた。「リメンバー リメンバー フィフス オブ ノベンバー」で始まる「Vフォー・ヴェンデッタ」という映画で知ったのだが、英国ではこの日をガイ・フォークスの日として打ち上げ花火を楽しむ日になっているそうだ。

 「火薬陰謀事件」(1605年)が未遂に終わったことを祝うことが始まりだったそうだが、今は元々の意味合いは薄くなっているようだ。ガイ・フォークスというのはその事件の首謀者の名で逮捕され処刑されている。

 「Vフォー・ヴェンデッタ」は、この実際にあった事件を想起させながらの近未来の英国を舞台にした全くのフィクションである。この映画に個人的におもい入れがあって毎年、この時期になると観直してしまう。

 復讐劇であり娯楽活劇でもあるが、全体主義の政府と人民との関係や「理念(idea)」についてのメッセージが含まれており、主人公の台詞にはシェークスピアからの引用や名言がいくつも含まれている。この場をお借りして「名言」と思われるセリフのいくつかをご紹介させていただきたい。

「ひとは政府を恐れるべきではない、政府こそ人民を恐れるべきなのだ」

 人民に対して「恐怖」を与えることによって掌握するという社会が描かれている。本来は、選挙のときだけではなく政治家や政府が人民を恐れなければならない。ポピュリズムの行き過ぎは、それはそれで問題だが。

「政治家は真実を隠すために嘘を語り、作家は真実を語るために嘘を使う」

 たとえ話をして、伝えたい事柄をわかり易く伝えるという意味では仏教などにも共通している。フィクションによって真実を伝えることが小説や映画の目的だ。逆にひとつ嘘をつくと次から次へと嘘をつかざるを得なくなることも現実によくある話だ。

「作用は同じレベルの反作用を起こす、これは万物を支配する基本原理だ」

 作用と反作用の原理を用いながら「因果の道理」のことを表していると解釈する。常に「原因」に「縁」が加わって「結果」となる。仏教の思想だ。

「ダンスのない革命など革命に値しない」

 踊って欲しいと誘った主人公に、女性は「革命の前夜に?」と驚く。そこで主人公が言ったセリフがこれだ。以前にも触れたことがあるのだが、英国のチャーチルが戦時中に戦費を賄うために芸術品を売り払おうと提案した部下に対し、そもそも何のために戦っているのか、と窘めたとされる。生命や国土だけでなく、芸術や文化、そういったものを守るために止む無く戦うものなのかもしれない。

「理念は死なない」「彼は“みんな”よ」

 これだけでは何のことか全然わからないが、自他非分離、仏教思想の「無分別智」統合の思想だ。映画のラストシーンでそのように感じ取った。仮面が表しているペルソナ、「自我」と「自己」についてなど、この映画にはどこか東洋の哲学が根底に流れているような気がしてならない。

「国家とは人民なのだ、人民だけが現実であり他のすべては虚構である」

 国土というものは実際に存在するが、国家というものは虚構のものであって、実体は人民そのものである。そして、たとえ世代の交代が起ころうとも、人民に「理念」があるとするなら、それは永く継承されていく。

■Vフォー・ヴェンデッタ 2005年 ワーナー・ブラザース制作

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